4.両手・皮膚の診察

バイタルサインの把握が終了したら、身体各部の診察に移ります。

身体各部の診察は、「診察の基本」で記述したように多少なりとも羞恥心と不安感とを引き起こすものです。 したがって、いきなり相手の顔や非着衣の上半身を凝視するようなことは避けます。

不安感を与えることなく、優しい感じで接し始める、という心遣いを示して、まず身体の比較的 末梢部分の観察から開始します。すなわち、両手の観察から始めます

a.話しかけの言葉

両手の観察を始めることを伝えます。
  • 「では、もう一度両方の手のひらを見せて下さい」

b.両手の診察

両手は、初めに手掌面を観察し、次いで手背面を調べます。

両手の観察項目
  • 手掌面と手背面の両方で観察する項目
    • 手全体の大きさ
    • 手とくに手指の変形・腫脹
    • 手とくに手指の異常運動
    • 皮膚の状態
    • 運動可能範囲
    • 疼痛や圧痛の有無

  • おもに手掌面で観察する項目
    • 母指球・小指球の状態

  • おもに手背面で観察する項目
    • 爪と爪周囲の状態
    • 指節関節の状態

両手の観察から発見可能な所見は、チアノーゼ、手掌紅斑、手指振戦、ばち指、尺側偏位などの手指変形、 産科医の手、手根管症候群、匙状爪、爪囲紅斑などです。これらが示す特徴像と代表的疾患とを良く把握して おく必要があります。

c.皮膚の観察

皮膚の観察は、両手のときのように、身体各部を観察するときに追加して行います。

全身皮膚の観察項目
  • 色調
  • 温度
  • 湿潤度
  • 緊張度
  • 発疹などの病変
  • 出血

皮膚の異常には、丘疹や結節、潰瘍などの局所的な皮膚病変のほかに、全身疾患の皮膚所見として、 色素沈着、チアノーゼ、貧血、黄疸、浮腫(水腫)、点状出血または紫斑、紅斑があります。 これらを診る部位と代表的疾患について復習しておいて下さい。


両手の異常所見・皮膚の異常所見の特徴像と全身所見との関係の把握が終了したら、
次の5.頭部・顔・頸部へ進んで下さい。


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