9.神経系の診察

神経系の診察もまた高度な技術が必要であり、診察から得られた所見に対する解析にも 豊富な知識と経験を要することは改めて述べるまでもないことです。

臨床研修は、これらが自然に出来るようになるための最初の一歩となります。着実に歩み出すために、まず 神経系のどこの部位のどんな機能から調べていくのか、その観察にはどんな手技を用いるのかについて、 イメージトレーニングを繰り返しておきます。次いで、もし神経系に異常があると、 それはどんな所見として表現されてくるのかを復習します。

神経疾患の診断には、詳細な病歴と的確な身体所見からの情報がとくに不可欠なことは広く経験されることです。 臨床実習のときは、とくにこれらの情報の把握の仕方について十分学んで下さい。 その上で、得られた情報の解析法についても学習を行います。

a.話しかけの言葉

精神状態の観察は病歴聴取のときやバイタルサインの診察のときに、また脳神経系の観察は 頭部・顔・胸部の診察のときにすませておきます。そこで、話しかけは次のようになります。

反射などの観察を始めることを伝えます。
  • 「そのまま楽に横になっていて下さい。神経の反射などを調べます」

b.神経系の観察

観察は系統立てて行います。

神経系の観察項目
  • 精神状態
    • 外観からの観察…意識状態、姿勢、顔面の表情  
    • 見当識
    • 言語  
    • 感情
    • 思考

  • 脳神経系

  • 運動系
    • 随意運動  
    • 不随意運動
    • 筋緊張
    • 運動失調  
    • 歩行

  • 反射
    • 深部反射…上腕ニ頭筋反射、上腕三頭筋反射、腕橈骨筋反射、膝蓋腱反射、アキレス腱反射
    • 病的反射…Babinski反射

  • 感覚
    • 表在感覚…触覚、痛覚  
    • 深部感覚…位置覚、振動覚

c.脳神経系の観察

観察は系統立てて行います。

脳神経系の観察項目
  • 嗅神経(T)
    • 嗅覚

  • 視神経(U)
    • 視野

  • 動眼神経(V)
    • 瞳孔の大きさ、対光反射、調節反射
    • 眼瞼
    • 眼球運動

  • 滑車神経(W)
    • 眼球運動

  • 三叉神経(X)
    • 顔面感覚  
    • 下顎運動

  • 外転神経(Y)
    • 眼球運動

  • 顔面神経(Z)
    • 顔面筋運動  
    • 舌の味覚(前2/3)

  • 内耳神経([)
    • 聴覚
    • 平衡感覚

  • 舌咽神経(\)
    • 舌の味覚(後1/3)、軟口蓋・咽頭後壁の感覚  
    • 咽頭挙上

  • 迷走神経(])
    • 喉頭・下部咽頭の感覚
    • 咽頭運動、声帯運動

  • 副神経(XI)
    • 胸鎖乳突筋運動、僧帽筋運動

  • 舌下神経(XII)
    • 舌の運動


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なお、神経系の診察の仕方や異常所見を観察したときの考察法などは、
診察の仕方と問題解決ハンドブック (南江堂)を参照して下さい。










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