上ホロから境山へ
〜なかなか行けない境山へ歩こう〜

4月26〜27日 テント泊 同行者: 札幌やまびこ山友会 
 「やまびこ」のなかで、上ホロカメットクから境山を経由して下ホロカメットクまで歩いてみようという計画がだされた。発案者は先輩であるオッキーさんである。ただ、テント担いでの山行ということもあり、さすがに下ホロは難しいということになった。天候にも左右されるが境山から下ホロに続く稜線の「肩」までは行ってみたいとなった。しかし、下界は春でも山は冬、一転して真冬の風にさらされることもあり、行けるかどうかはわからない。

 十勝岳温泉の凌雲閣に着く。天気は素晴らしい快晴。しかし、予報では明日は下り坂ということである。まずは準備したのち、ほぼ夏道に沿って歩きだす。
 上ホロから富良野岳、見える山々はすっきりとそびえたっている。11月の冬季訓練や昨年の雪崩事故のときもそうであるが、積雪の時期に訪れたこの地で晴れた日はほんとに少ない。たいてい、いつもは雪降り模様であったから。



 安政火口の近くにつれて、上ホロ周辺がはっきりと見えてくる。しばし歩けば富良野岳へ沢を渡っての折り返しのみちとなる。もちろん、この時期、夏道はまだ雪に閉ざされており、しかも、D尾根からの雪崩のデブリに埋め尽くされている箇所もある。
 陽射しは強く明るくすっかり春の香りがするごとくである。雪も光を反射してまぶしい。一日で日焼けするのは間違いないだろう。



 富良野岳も雪は融け始めており、そのコントラストが鮮やかだ。あと二カ月もすれば夏道を多くの登山者が歩くのだろう。ただ、この山は冬も人気のある山だ。写真の右手の北尾根から登るのだ。まだ、ぼくはこのルートの登攀はしていない。



 ぼくらのパーテイは沢を折り返したところで休憩とした。そして、ここでアイゼンを装着する。途中まではほぼ夏道に沿って歩くのだが、急斜面のトラバースとなるため、アイゼンの装着は必須である。万が一滑落したときには沢底までストレスなしに降りることができる(ーー;)
 途中から、ほとんど直登する。一挙にD尾根の稜線にあがり、三峰山周辺を真正面に見えるルートに変える。実際には、その後下の写真の左側をぐるりと廻りこんで上富良野岳を目指すのだ。このあたりは斜度も緩やかで歩きやすい。ただ、しばらくトラバースが続くのでどうしても右足に負担がかかってしまう。



 どのパーティも歩くルートはほとんど変わらない。これが一番歩きやすいのだ。上富良野岳から三峰山の稜線にあがるには、この直線的ルートが一番だ。ここも緩やかでありトレースもしっかりしていて、この上を歩くぶんには全然問題はない。ただし、はずれるとズボズボ埋まってしまう。
 それにしても、みなさん、随分と快調なのだ。ほぼ予定通りに進んでいる。稜線にあがるのが楽しみである。



 斜度は急に増してきた。稜線も間近になってきた。雪は腐っているから精神的には楽なのだが、ザックの重荷がこたえくる頃だ。
 単独行の男性が降りてきた。上ホロまでのピストンだそうである。やまびこ山友会のことを知らせる。その男性は沢のぼりやクライミングについても興味を示したので、ホームページのことを知らせたが、果たして見てくれているだろうか?



 今回の装備ではアイゼン(10〜12本爪)は必須装備としたが、ピッケルははずした。そのかわりというのもなんだが、ストックを持ってきている。雪が氷化すればピッケルは当然必要だろう。
 みちはこのあたりではほぼ夏道に沿って歩いていることは疑う余地はない。遠く十勝岳も見え出して映えている。



 その十勝岳を休憩地点から見た。



 遠く富良野盆地が広がる。稜線まではあと一息といったところだ。



 さらに再び富良野岳。



 そして、また、しつこく十勝岳。



 上富良野岳のピークに着く。見た目ではわからないがここではかなりの強い風が吹いている。これまではアウターは脱いで行動してきたのだが、大急ぎでザツクから取り出し着る。
 そして、ここから見る南東斜面はかなり雪が少ない。夏道を歩く状態になってきた。みんなの足もとはプラブーツあり厳冬期の登山靴ありだ。プラブーツでの登山道歩きは辛いものがある。できれば雪をつないで歩きたい。今年はどこの山も雪が少ないというが、この山域もまったくそのとおりだ。上ホロから境山への稜線にははたして雪が残っているのだろうか?



 上ホロ近くから境山方面を見る。やはり、雪が少ない。雪がないところはハイマツを漕いで進まなければならない。ここで、いろいろな意見が出る。上ホロ小屋を基点として十勝岳のピストンを選択するしかないのではと。
 休憩しながらみんなでよくよく見ると、なんとか境山への途中の小ピークまで雪がつながっているようだ。おまけにハイマツもそれほど背の高いものではなく、なんとか歩けそうだ。ということで、リーダーの最終決断で当初の予定どおり、境山を目指して歩くことにした。
 天気はしだいに下り坂である。薄雲も出てきた。やはり、明日はあまり期待できないかもしれない。
装備についてであるが、今回は冬用のアウターにするかレインにするか迷った。この季節であれば雨が降ってもおかしくはない。しかし、あまりにも温度がさがるとぼくのレインならパリパリになる可能性もある。しかし、いろいろと考えてレインにした。軽量ということもあるが、氷点下10度以下にはならないだろうという予測のうえである。



 途中のハイマツ漕ぎは大変ではなかったが、それなりに歩きずらい。しかし、快調に進み、小ピークにたどり着いた。目の前は念願の境山である。下のコルには小さな沼もある。水も補給できるかもしれない。(実際には全面結氷していた)
 テン場はこのまま降りていき、雪のなるだけ水平地を選ぶことにした。写真では平坦地のように見えるが実際には斜面である。
 会のテントは大きく、6人がいくらか余裕のある広さである。そして、このテン場は夜になると富良野方面の街灯りが見えるところだった。また、携帯電話も通じたのである。メールのやりとりをしていた方もいる。
 


 翌日の早朝、外は激しい雪降りだった。一夜にして春は去り、冬に戻ったのである。そのうちに雪はやんできたものの、ガスがかかり目の前にあるはずの境山は見えない。当初の計画である境山を越えて「肩」まで行くというのは断念せざるをえないとリーダーは言う。
 リーダーの指示のもとにコンパスを正確に境山ピークにあわせて、雪をつなぎながら登りだす。それほど遠い距離ではないのだが慎重に歩く。
 そして、テン場を出発してから一時間でピークに立つ。まさしく冬山。

 降りるときは更に慎重となる。歩く方角がわずかにずれても、コルでは相当な距離に離れてしまう。しかも、周囲がまったく見えない状況では、目印にしていた小さな沼なんていうものは、わからないしあてにできないのだ。
 しかし、百戦錬磨の女性軍・・・テン場に辿りつく。



 テン場を撤収し帰途につく。途中の小ピークを廻り込むようにトラバースして戻る。こういうとき、ぼくのヤマカンはそれなりに力を発揮するのだ。ただ、残念ながら昨日来た道との合流点の予測よりもかなり上になったこと。
 安政火口の下ではそのまま夏道を歩くのではなく、カミヌックシフラヌイ川の上を歩く。沢はまだまだ雪にすっかり覆われている。このまま歩いて降ると凌雲閣の露天風呂にも直行できるのだ。もちろん、紳士淑女であるからして、そういうお茶目なことはしないし、考えもしないだろう。想像するのは僕ぐらいなものか・・・。



 今回は残念ながら下ホロカメットクまでは行けなかった。そして、これは来年の課題となった。来年はトムラウシ側から下ホロそして境山に繋ぐことができればと願う。
 同行された会の仲間に感謝!
                             THE END


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