カムエクからコイカクへの縦走
〜日高主稜線を歩く〜
2009年8月7日〜9日 | 同行者: 札幌山びこ山友会 | ||
日高の主稜線を北から南まですべて歩いてみたい・・・。これは岳人が望む大きな夢であるのかもしれない。しかし、それは実際歩き始めないと実現しない夢なのである。 ぼくたちはその夢の実現に向かって歩き始めた・・・。 まずはどこを歩こう。歩くのなら誰もが歩いていて、さほど難しくなく、さりとて日高の醍醐味がなくては詰まらない。そして選んだのはカムエクとコイカクの間だった。しかし、その間の藪漕ぎはそんなにやすやすとぼくたちを通してはくれなかったのである。もっと、厳しい南日高の藪の状態から見れば、まだ楽なほうとはいえ、ぼくたちの「やる気」を本物かどうか、リトマス試験紙で試したのかもしれない。 ゲートに車を置き、まずは七の沢まで歩く。ここからは沢装備に替えて目指すのはカムエクの懐の八の沢カールである。 仲の沢の出合いで休憩をとる。ここは2年前にフェルさんたちと歩いたときにも休んだ場所だ。なによりも七の沢と八の沢のほぼ中間地点にあたり、休むのに適した場所なのだ。 八の沢を過ぎていよいよカールを目指す。遠くにカールが広がるのが見える。雪渓も見えて水にも困らないだろう。冷たく美味しい水が待っている。 途中にも雪渓が広がる。暖かい日が少なく今年は雪解けが遅かったようだ。 ここで一休みをして、コンデンスミルクを使いかき氷をつくる。これが絶品なのだ。はっきり言って、これ以上に旨いものはそうない。 雪渓を注意深く歩く。ところどころにある亀裂や穴は相当に深いのだ。 三股の滝を過ぎると急に険しくなってくる。しかし、この道を歩いたからこそカールのすばらしさがなお印象に残るともいってよいのだ。道とはいっても、小沢である。前回よりもずいぶんと水量が少ない。 途中の休憩のさい、TM子さんから「撮って!」と言われたその花。 カールに着いた。いつ来ても静かで雰囲気のすてきなカール。今日の宿はここでのテントとなる。 すでに、ツェルトがひとはり。住人はカムエクピークに行ったのだろうか?音もなく風は流れ、ときおり、鳴きうさぎの声がこだまする。 疲れを癒し、明日からは藪漕ぎの世界に浸る。 輝ける朝の光。すでに準備はできた。一人ひとり重荷を背負い、はるかコイカクの空を想い浮かべて歩みだす。 振り返り見ればカムエクが大きく翼を広げている。 今回は全員が過去にカムエクのピークを踏んでいることもありカットした。少しでも今日のテン場に近づこう、コイカクにも近づこうという考えなのである。 テン場は順調に行けば、1823峰からコイカクに向かったコル。 まずはピラミッド峰への登りとなる。ここは道はしっかりとついていて余裕をもって歩けるところだ。 前に1823峰が・・・そして遥か遠くに1839峰がひときわ目立つ。あのヤオロから1839峰の間もなんと距離のあることか! とにかく、まずは1823峰に行かねばならない。 鋭い日高の稜線だ。踏み跡らしきところはすべて稜線にそって残っている。トラバース斜面にはない。だから、アップダウンを忠実に歩いていかなければならない。 ひとときの休憩。時間はまだ早く、あせりも困惑もまだない。ただ、ひたすらに歩むのみだ。 数かぎりなく続く稜線の小ピーク。降りては登り、登っては降りる。藪はしだいに深く、背丈を越える場所が出てきて、なかなか前に進めなくなってくる。そう、これが日高のささやかな徴だ。 ピラミッド峰をはるかに過ぎて臨むカムエク。そう、だんだんと遠くなってゆくのだ。 稜線の険しさは一段と増してくる。そう、あの際を歩かねばならないのだ。踏み外せば、この世のものではなくなってしまう。しかし、帰るにしても歩かねば・・・。 雲が湧いてきた。陽射しが暑くなってくる。少しずつ疲れがたまり、みんなの歩みが重くなってくる。 願わくば、雲の一重二重が太陽を覆いつくしてください! 祈りは通じ陽射しはかげる。 きびしい行程のなかで、ぼくたちはテン場を1737峰のピークとした。やっと5人用テントがはれるその場所は、狭いながらもいくらか快適な場所となった。しかし、なかには睡眠中に蹴飛ばされた人がいたらしい。・・・それは僕だったのだが・・・。 翌日、早めに出立し、1823峰のピークに向かう。 今日はなんとしても、コイカクの夏尾根には着かねばならぬ。順調ならそこから一挙に下って、コイカクの沢出合いにもどり、帰りたい。いずれにせよ、厳しい道程となることが予想された。 1823峰のピークにて。 1839峰が少しだけ近づいたようだ。けれども、コイカクへの稜線がその困難さを見せつけている。本当にあそこまで戻れるのだろうか?しかし、明日の予備日の設定がいくらか気分を和らげる。 そう、遠く感じてしまう。左手に見える三角錐の山はポンヤオロであろうか?ペテガリ東尾根・・・まだまだ先の話となるのだろうか? 来し方をふりかえり見れば、ピラミッド峰からの稜線があざやかに映しだされている。あそこを歩いてきたのだ。 1823峰から降りて、ふりかえり見る。 なおも降り続ける。ここらは藪漕ぎが少なくて喜ぶ。 休憩した場所からコイカクを観る。 時間は予想どおりだ。だんだん目安がはっきりとしてきた。慌てまい!急ぐまい。 最後の急斜面をあがれば、そこはもうコイカク。一人ひとりの気持ちが再び熱くなる。そして、そのことはこの縦走の旅が終わりを告げることになる。 時間はたっぷりとある。 (了) |