小樽赤岩
〜高度感溢れるマルチピッチ〜
平成19年7月21日 | 同行者:札幌やまびこ山友会 Jさん、BCC フェルさん、Nさん、Pさん | ||
再び、赤岩を訪れることになった。メンバーは僕と同じやまびこからJ女史、そしてBCC(ビギナーズクライミングクラブ)からフェルさん、Nさん、Pさんという豪華(?)メンバーである。 今回はNさんの要望で西奥壁に行きたいとのこと。僕にとってはどこへ行こうと殆どが未知の岩だから、どこでもいいようなものだが、ただ、Nさんの一言が気にかかる。というのは、「西壁よりももっとすごい高度感を味わえる」ということば。この時点ではこの言葉のもつリアリティなんぞ全く考えてもみなかった。いや、考えたくなかった。 朝8時に峠に着く。あらら、もう、みなさん来ているではないか。朝食も含めて慌てて用意する。 やはりこの時期の赤岩は静かだ。ここにはぼくらを除いて誰もいないようだ。当初、天気の心配もしたが、その必要もないほどだ。またまた、高いところから青い海を見なくてはならないのかい・・・。 遊歩道から沼崎新道に歩みをすすめる。この道もアップダウンがきつく汗がでる。もっとも、この道は赤岩の主とよばれる方が切り開いたものだそうで、この道ができるまでは一旦海岸まで降りて、そこから登りかえして西壁周辺に行ったとのことである。 まっすぐ西奥壁に行くと思いきや、まず西壁で身体を慣らすということになった。6月にやまびこの壁訓練で「連れて」いかれたのがこの西壁のカンテルートで、その高度感にいたく痺れてしまった記憶がある。だのに、それを聞いても感じない。まだ、眠気が醒めない様だ(ーー;)。 その身体慣らしの西壁は、ノーマルルートを攀るという。いまさら、何処を攀ろうと関係なくなってしまった。 ここも3ピッチで、最初にNさんとPさん、そして僕のパーテイ、ついでフェルさんとJさんがパーテイを組むことになった。 (なお、今回の写真はすべてフェルさんから提供されたものです。この場を借りてフェルさんに感謝申し上げます) 写真はPさんがとりついたところである。この取り付きは岩の割れ目〜クラックをどう使うかによる。 左側にはホールドとなるところがない。 セカンドを僕が攀る。このルートの核心はきっとここなのだろう。この上は登りやすい。 1ピッチを登りきり、2ピッチ目に向かう。前回と違って、あまり高度を感じない。余裕もある。しかし、これもまた困りものである。クライミングの何たるかを知らない初心者が、攀ることを甘くみて油断するということほど怖いことはない。適度な緊張感をもちつつ攀ることが大切なのだと思う。 最後の3ピッチの途中のハングが不気味であったが、実際に触れてみるとそうでもない。上ではPさんが、下の写真のごとくビレイしている。もちろん、自らもビレイしつつなのだからやりずらいのではないかと思ってしまう。 ちなみに、攀る姿は僕である。 下からはフェルさん〜Jパーティが攀ってくる。こうやってみると確かにけっこうな高さと思う。しかし、攀っているときは、そんな余裕はありはしないのだ。とにかく一手、一歩が真剣なのだ。 それでも、以前に攀ったカンテルートよりはやさしいと思う。カンテルートの方は、取り付きが難しい。取り付きが難しい点ではノーマルルートもそうなのだが、その後のホールドの少なさや、カンテの方はその言葉どおり、カンテを乗っこすこともあり、僕のような初心者には心臓によくない。 いくらロープで繋がれているとはいえ、それこそ、岩に「包まれる」感覚さえなくなるのだから、不安がつきあげてくるのは仕方がないと思う。 フェルさんもJさんも、岩には相当の経験を積んでいるからして、さっさと攀ってくる。 2ピッチ目ではすぐ隣にきてしまった。3ピッチ目のルートは複数とれないから、二人には待ってもらうことにした。 西壁の頭に着いた僕たちのパーテイは降りる準備にとりかかる。前回のやまびこのときは懸垂でロープを二本繋いで約50mを降りたのだが、今回は攀ってきたルートを忠実に降りることにした。 やはり、懸垂を3回する。ATCを使うのだが、まだ不慣れな僕には太いロープを流すのがまだ上手くない。したがって、スルスルと降りるというよりは、ヨタヨタ歩きになってしまう。 まぁ、少しずつ上手くなるだろう。 降りてから昼食をとり、いよいよ西奥壁に攀ることになる。見た目はこんなのっぺらとした壁をどうやって攀るのだろうと思っていた。まさか、西壁の頭から傍に見えたほぼ垂直に近い壁を攀るのではないだろうと思っていた。 しかし、現実はまさにその壁だった。 NさんとPさんがパーテイをくみ、フェルさん、Jさん、僕が三人のパーテイを組むことになった。僕はまたしてもセカンドで攀ることになった。 まず、Nさんがリードで攀る。しかし、湿りもあり滑りやすいという。難儀しながらもパワー全開で攀っていく。最初のピッチが難しそうだ。Pさんも攀っていく。ここを僕は本当に攀るのだろうか? ついに、フェルさんがいく。右手が故障しているフェルさんは、いつものような精彩がない。しかし、行ってしまった。 僕も攀る。たしかにホールドがよくわからない。けれども、三人の攀る姿を見ていたからルートははっきりとしている。あとはそのルートのなかでホールドを確認しつつ攀るだけだから、極端な難しさは感じない。なんとか、1ピッチ目のところにいるフェルさんのところに行きついた。 しかし、2ピッチ目からはすごかった。フェルさんは2ピッチをきらずそのまま上までいってしまった。下から見る感覚ではそれほど難しいようにも思えなかったがそれも浅はかであった。 周囲にホールドのないクラックを使って攀るしかなくなってきた。もうここまで来たら降りるわけにはいかないだろう。時間をかけてもじっくりと考え攀るしかない。 ロープ一本が僕の身体を守っている。が、周囲には人がいない(いても、いないと同じなのだ)。この孤独感は通常の山歩きでは感じることはできない。かつ、極限状態にあるようなものだ。 どのように攀ればいいのかアドバイスを求めることもできない。すべて、考え考えぬいて、手足を動かす。 やや時間をかけて、ようやっと上部に近づいている僕の姿である。このあたりまで、しんどかったぁ〜〜。この写真はフェルさんが西壁の頭から写したものであるから、かなりの高さであることがわかると思う。 とにかく、こうして攀りきった僕だが、さすがに上では喉がカラカラ、玉の汗が噴出したのである。 ついで、Jさんの写真である。 やっぱり、高いよねぇ〜。 しかし、攀りきったあとに不思議な爽快感があったのも確かである。しかし、なんとも、クライミングは・・・。 (了) |