小樽赤岩〜トリコニー

〜V級ルートへの挑戦〜

平成19年9月9日  同行者: BCCメンバー
 予定していた黒松内の沢が雨によって中止となった。車を走らせてニセコ町まで行くと耐えられないような雨の降り方に、沢をあきらめて札幌に戻った。
 そこで、元々は8日にも予定していた(雨で中止となった)小樽赤岩のクライミングにお邪魔させてもらうことにした。
 今回のクライミングは、マリッカさんの訓練が主目的であり、また、クライミングというのは本来少数限定のものだから、”飛び込み”参加というのはいただけないことなのであるが、”覗き見”でもいいと思い小樽に向かった。しかし、今後はこういうことはしないつもりだ。クライミングは即事故とか怪我に繋がるスポーツだから、リーダーにかかる負担と責任は重いのだ。

 赤岩峠に着くと、やはり沢からの転進組が多いせいか車の置き場所に困るほどであった。攀るか攀らないかわからないので、道具をザックに詰め込み奥リスあたりを偵察することにした。
 遊歩道から道をそれて岩場へと向かうと奥チムニーに人影があった。上からの懸垂下降の最中でもあり、静かに歩いていくと、そこにはT山さんとN川さんと知り合い一人、そして、こざるんがいるではないか。
 聴くと、西壁の洞窟でみんなこれから集合するとのこと。良かった。なにしろ、この赤岩は広くて、巡りあえないこともしばしばあるのだ。

 ふと見ると、T山さんが回収するロープの末端が上から落ちてくるところを見事キャッチしているではないか。その掌の開きとそこにスポッとはまるロープの一連の流れに見惚れてしまう(^^♪

 西壁で昼食をとる。休憩するにはもってこいの場所なのか他のパーティも集まる。そのなかには、西條さん「地図がガイド」チームの一人のチロロ3さんもいる。
 ここで再び二パーティにわかれることになる。ぼくはフェルさんのリーダーのもとに、T野さん、マリッカさんとパーティを組むことになった。場所は東のトリコニー・・・(~_~;)
 汗をかきかき、西壁に来たのに、峠に戻ってさらに東へ・・・。

 トリコニーに着くと先客がいた。その先客とは、HYMLでマリッカさんの知人であるmarboさんパーティだった。ぼくは初めての対面だった。marboさんはチロロ3さんと同じくピオレに所属しているらしい。

 トリコニーのTOPに行くと少し離れた岩場に人がとりついていた。よく見るとその服装の色からJさんだということがわかる。
 みんな口々に「Jさん、頑張れ!」と叫ぶ。しかし、Jさんはそこから全然動かないのである???
後から聞いた話によると、Jさんはビレイ中で、何故「頑張れ!」と言われたのか不思議だったそうだ。
 たしかに、普通はビレイヤーには「頑張れ〜」とは言わない(@_@;)
 (ちなみに、そのとき攀っていたのは、西奥壁を一緒したNさんだった)
 
 トリコニーの基部に行きダイレクト・ルートを観る。ルートの下部はホールドも多く問題なさそうである。左にトラバースした後も、のっぺりとはしているがホールドはある。それほど難しくはなさそうに見えた。

 まず、フェルさんがリードで攀り、しなやかにさあっと行ってしまう。ぼくはビレイしたため、写真は撮れない。
 つぎにT野さんがいく。写し手(僕だが)が下手なのでいい写真ではないが雰囲気を味わっていただければ幸いである。

続いて

 続いてマリッカさんが挑む。

 ルートの上部を拡大してみる。

 そして、次に僕が攀る。
やや、ジェードル状のところは問題なく行く。トラバースも問題ない。でも、そこからが壁だった。
 カラビナの架けかえがやりずらく一旦いくらか降りたのだが、再び攀ろうとしたら、両腕がバンプしている。ホールドにすべき窪みが確認できるし、指もかけることができるのだがちっとも力が入らない。
 「30秒休憩・・・」と声をかけて腕を休めるが回復しない。しばらく粘ってみるもののダメである。
やむなく、フェルさんが繰り出したヌンチャクを手がかりに上に行く。
 そこがこのルートの核心部分であり、ここで三〜四手をきちんと使えれば行けたのだろう。

 何故、両腕がバンプしたのか?その後、フェルさんとのメールのやり取りで判明したのが次である。

 まず、トリコニーという岩については、フェルさんはこう述べる。
「中赤岩の奥フェイスが、極小ホールドや極小スタンスへの微妙な立ち込みなと、スタテイックなムーブの完成度が問われるルートなのに対して、このルートはガバホールドながら、全身を駆使した荷重分散など、ダイナミックなムーブの完成度が問われます。」

 そして、僕が行けなかった原因について、
「行き詰ったところから上に抜けるまで、最低、あと3手、ロスがあれば4手は必要です。あそこから次の一手をとるには、身体を(足を、)上げるしかありません。
 腕力が尽きた原因は荷重分散ができていないことです。懸垂訓練で筋力をつけるのには時間が掛かりますが、ムーブを工夫して荷重を分散する(上腕筋の消耗をセーブする)事は短期間で可能です。
 ・・・「脚で登る」事ができるようになると苦労したパートがあっけなく行けるようになります。」

 さらに
「このルートでは、靴底の摩擦力やキツめのシューズを履く事で得られる荷重集中による立ち込みより、スムーズな体重移動と荷重分散がポイントになります。
 ジェードルから抜け出してトラバースする部分では、伸ばした先足(普通は左足)への乗り込み(体重移動)がポイントです。
 ホールドにブラ下がって体重を移動するのではなく、ホールドで身体が剥がれるのを防ぎながら、先足の上に腰を移動させる感じです。
 続く直上部では、足への荷重を左右に分散しながら身体を上げていく荷重分散がポイントです。
 この部分では、岩塔上のガバホールドを左手で取るまでは、上から下に荷重して立てるスタンスが少ないので、両足を「交互に」左右に突っ張る動きが必要です。この時、身体は岩に対して正対ではなく、横向きになります。」

 とてもわかりやすく、今後の僕にとってとても大切なことを示唆されたように想う。大変、ありがたく、うれしく想った。

 さて、僕が挑戦する前に合流したJさんのトリコニー・ダイレクトの登攀姿を載せよう。



 僕にとっても新しい課題ができた・・・。(了)


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