晴天の旭岳
〜厳冬期ならず春の山〜

平成20年3月30日(日) 同行者: 息子、フェルさん一行
 旭岳といえば、北海道の最高峰であり多くの人に登られている山である。夏山の時期には姿見のロープウェイ駅から、約3時間程度で登ることのできる山である。ガスに覆われて山頂直下の金庫岩付近での道の屈曲点を注意して迷わない限り難しい山ではない。
 ところが、厳冬期に入るとものすごい強風と岩と氷に覆われた難しい山になる。これまでも多くの人の生命をのみこんできた。
 ぼく自身はといえば、息子とかなり以前に登ったきりだった。この山のピークをめざすだけなら、つまらない山である。ほとんどはピークを越えてお鉢平に向かう途中に寄るところというイメージが大きい。
 今回は冬山という前提で、氷雪訓練としてこの山に向かった。ところが、今年は雪が俄然少なく、おまけに暖かく、いわば春山登山となってしまった。でも、すばらしい眺望に恵まれた。コンパクトデジカメの液晶では何が写っているのかさっぱりわからず、構成もまったく”やまかん”状態であった。でも、それもよしとしょう。

この山行、当初は息子と二人だけの企画であったが、BCCの師匠であるフェルさんにも声をかけてみた。すると、フェルさんともう一人のクライミング仲間の参加となり四名とあいなった。ただ、ぼくと息子はピッケルに12本爪アイゼン「仕様」であったが、フェルさんたちは山スキー〜兼用靴という装備であったので、姿見の駅からの行動は別々ということを想定していた。
 ロープウェイ駅には朝9時発を待っている多くのスキーヤー、ボーダーがいる。ぼくらのように登る格好をしている人はさすがにいない。


 噴煙を左に見て登る。


 雪は硬くクラストしている。これなら、ツボで歩いても埋まることはない。たしかに、観光客もスキーヤーもこの地点まではきている。モクモク立ち上がる噴煙を見て戻っているようだ。
 あがるにつれて、景色が広がってくる。周囲がはっきりとしてくる。どこもかしこもすっきりと見える。陽射しが強くて、雪に反射しまぶしい。そして暑い。アウターはもちろん出発前に脱いでいるし、長袖のシャツはまくしあげている。厳寒期であっても、風が強く相当に寒さが厳しくないかぎり、アウターは脱いで歩き出す。汗をかいてから脱ぐのでは遅いのだ。


 標高1800mくらいでスキーはデポする。ぼくの細身のスキーではシールも細く急斜面ではずり落ちてしまう。息子やフェルさんは問題なく登っている。こういうときは、いつもの山スキーを使いたくなる。今回は12本爪アイゼンのために靴はコフラックのプラブーツをはいている。そのため、スキーはツァー用のもの、ジルブレッタ300での歩行となる。

 途中、息子は写真撮影のため、あまりにものんびりとしているせいか、10人以上の外人さんに追い抜かれる。みな、スキーをザツクにくくりつけ、アイゼン、ストックでのいでたちである。きっと、旭岳ピークから滑り降りることを考えているのだろう。

 金庫岩をまき、ほどなくピークが見えてくる。雪は風によってとばされ、ところどころ岩肌がでている。


 ピークの手前からは、トムラウシや十勝連峰の山々が美しい。どうも写真では、はっきりしないのだが下ホロカメットク山が遠いにもかかわらずくっきりと目立っている。お馴染みのトムラウシはまだまだ冬のさなかであることを匂わせている。それにしても、忠別の「谷」のすごさには驚かされる。これでは、いったん降りてしまえば元に戻れないのはよくわかる。
 
 
 ピークに着いたのは、13時頃だっただろうか。姿見の駅を午前10時20分頃に歩きだしたから、2時間40分かかっている。もっとも、写真を撮ったりしての歩きで相当ゆっくりしての到着だった。
 そこには、先ほどの外人さんと山スキーのツァーの二人だけしかいない。これほどの天気でも、この山に来る人は意外と少ないようだ。
 大雪の高原のかなたに石狩連峰がそびえたつ。

 あの広い稜線を通ってトムラウシに到るのだ。トムラウシはいつ見ても、何度行っても憧れの山である。天人峡からのみちも写真の右下の尾根づたいに歩いていくのだろう。昨年の5月に「やまびこ」のメンバーがそのルートを歩いている。今、この時期だからこそ、その美しさがより映えるのだろう。

 すぐ目の前の目立たないピークは後旭。遠くに白雲岳が見える。お花畑街道が広がる。


 ピークから北西側の尾根を見ると先ほど追い抜いていった外人さん〜聞いた話ではオランダ人だという〜ただ、ぼくがピークで聞いた彼らの流暢な英語はオーストラリアの人ではないかと?
 その外人さんたちが、その場所から地獄谷に滑降していくのである。この雪質で滑っていくのだから相当な技術をもっているのではないか。ただ、彼らはスキー靴もしくは兼用靴だったから、ぼくたちから比べるとずっとスキーは操作しやすいはずだ。しかし、写真には載っていないが、この下には岩がゴロゴロでている箇所があるのだ。


 そろそろ降りようか、と息子に声かけた頃、見慣れたメンバーの姿が見えた。フェルさんたちだ。すっかり、登ってこないものと思っていただけに、同じ感動を共有できることは嬉しいものだ。背後にはオプタテ、十勝岳などの山々が映え、富良野岳もくっきりと浮かんでいる。


 しばし、ピークにとどまり、名残惜しくも下山する。金庫岩周辺のかたちづくられた雪の模様が美しい。ただ、近くには寄ることは恐ろしい。


 スキーデポ地点からの滑走は大変だった。もともと、スキーは下手なうえのプラブーツでの滑り。何回、転んだだろう。エッジの効かないから、ただ、どっちに向いても下に落ちていくだけのことで、これじゃ、ツボとどっちが下山が早いのだろうか?
 ゲレンデも状態は良くなったものの面白いスキーではなかった。けれども、この眺望のすばらしさはそれを超えるものを与えてくれたことは間違いない。
 この日に感謝、大いなる大自然に感謝!!
                              (了)


山のメニューに戻る