伏美岳からピパイロ目指して(1)

〜残雪の稜線を歩いて〜

平成17年6月11日 前日夜剣小屋泊 同行者: 息子
 息子とはじめて伏美岳を登ったときから、稜線続きにある山ピパイロ岳に行こうと考えていた。しかし、その機会はなかなか訪れずにいた。なにしろ、日帰りではかなりの体力が必要だと記述されていたし、その時点では稜線歩きのなんたるかも知らなかったのである。
 それでも、ついに意を決するときかきて憧れの山に向かうことになった。

 前日の夜は剣小屋に泊まることにした。札幌を夜遅くに出る場合、この小屋は大変重宝な存在である。電気もあり、水もある。そして、伏美へ行くときの途中にあるから、アクセスもいい。

 しかし、我々にとっていつも問題となるのは、朝の出発時間なのだ。どうしても、寝過ごすことが多い。特にピパイロまで行くとすれば登山口を6時前に登りだすことが求められる。しかし、このときも、恒例の誰かの寝坊により、登山口は6時半を過ぎていた。

 天気はまずまずで、ところどころ青空も見える。なんとかもつのではないかと考えながら、一歩を踏み出す。雪はとけて久しぶりの夏道の感覚だ。なにしろ、5月の末まで山スキーで雪の上を滑っていたし、また、小樽の赤岩でクライミングの講習を受けていたのだから、”夏山”を歩くというのは久しぶりなのだ。

 標高も1400mぐらいになると雪渓歩きに変わる。雪は柔らかく急斜面でも別段問題はないのだが、ただ、ときおりズボッとはまってしまうのが難儀だ。
 久しぶりに歩くせいかなかなか調子があがらない。息子の方は装備も軽いせいか、さっさと先に歩き出す。青空も見えるがガスもたちこめており眺望への期待はしないほうがいいのかもしれない。
 左手に妙敷山が見えてくるとピークもそう遠くない位置にあることがわかる。この山も数年前に登っている。そのときも、本来はピパイロ目指していたのだが、訳あって転進したのだ。

 伏美から妙敷山までの稜線は幅が広く、危険なところはほとんどないからとても歩きやすい。最近はけっこう歩かれているようだ。

 いつもそうなのだが、伏美ピークの手前にくるとぼくの歩みは遅くなる。それまでの急斜面とはうってかわって、緩やかになりとても歩きやすいのだが・・・。
 それでも、一歩一歩の積み重ねは間違いなくピークに到達する(^^♪。ここで大休止をとる。ピパイロ方面には少しながらガスがかかりちよっと不安である。そして、ここからの稜線歩きが体力を使うのだ。
伏美のピークは標高1792mなのだが、なだらかなアップダウンを経て1540m水場のコルと呼ばれているところまで降りる。多少の登りを経て再び同程度の標高のコルに着き、そこから1917mのピパイロに登ることになる。このアップダウンが体力を消耗するし、また、目的地に着いたら着いたで帰ってこなければならない(~_~;)
 ともかくも歩き出す。

 伏美からは踏み跡を辿るのだが、やはり人が多く入っているせいかほとんど登山道だ。雪もなく歩きやすいのだが、ところどころ雪がびっしりと残っている。雪の上のほうが歩きやすいところもあり、雪を繋いでてく。
 幌尻のカールや戸蔦別岳がだんだん近くなってくる感じだ。しかし、ガスも多くなってきたので、やや意欲が落ちてきた(~_~;)

 途中で人に会う。ガスが濃いそうだ。しだいに意欲がうすれていく。しかし、ここまで来たのだから、いけるところまで行ってみよう。時間もまだ早い。

 しかし、休憩のたびに休む時間が長くなってきた。疲れもあるが大きな原因はやはり意欲が減退してきたことである。ピパイロのピークはガスに隠れている。あのピークにひいこら登っていってガスを見に行くのかと思うとやるせなくなってくる。
 コルを過ぎて1730峰への登りにかかる見た目はかなりの急斜面だが、実際にはそれほどでもない。

 ただ、これを登ってさらにその奥に1730峰がある。ここからはピッケルを使う。雪は柔らかいからアイゼンは使わない。ぼくはなるべくならアイゼンは使わない方がいいと考えているのだ。クラストしているのならともかく、柔らかいのだからアイゼンを使う理由はない。
 1730峰に着くとピパイロ方向から夫婦づれがやってきた。話を聴くと早朝に出て1967峰まで行ってきたという。それも長靴でだ。なるほど、長靴の方が歩きやすいかもしれない。
 ガスで何も見えないという。たしかに、この1730峰の奥は何も見えない。ここで意欲がゼロになってしまった。
 天気のいい日にまた来ればいい。たしかに、ここから1時間もかからずにピパイロのピークに着くことはできるけど、ガスばかりじゃ何を見にきたのかわからない。
 こういうときの決断は早い。そして、若干の休憩ののちに戻り始めた。
 伏美の方の空はすっきりしている・・・。

 (了)


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