カムイエクウチカウシ山(つづき)

〜カムエクピークに着いて〜

 午前12時56分、我々はやっとピークに着いた。道草が多すぎたせいだろうか(*^_^*)
まずは、北海道岳人の憧れである1839峰を見る。あの稜線を歩くのはいつのことになるのだろうか。
来年か再来年か。当然ながらカムエクよりももっと厳しい道程となるだろう。なにしろ、藪漕ぎがあるからして。


 1823峰の奥にコイカクのピークが見える。カムエクからコイカクまでの縦走はもちろん1823峰を越えていくのだ。
 コイカクに行ったのは3年も前になる。再度あそこから1839峰に行かねばならない。

 ピラミッド峰が見える。今回は残念ながらあそこには行けない。

 はるか奥に日高幌尻と戸蔦別岳が見えるはずなのだが雲に山頂部が隠れている。


                 短いながらも至福の時間を過ごすことができた僕たちは午後1時25分に山を降りることになった。
 これほどまでに美しい山に来ることができる機会はそう多くはないだろう。 せめて、この次に息子と来たときも素晴らしい展望が開けていることを願う。
 
 八の沢カールからカムエクピーク間は標高差にして約500m、時間にしてほぼ2時間で登ることができる。
 下りはもちろん早い。1時間半でカールに着く。
 まったりとした午後の陽射しを浴びながら、こんこんと湧き出ている水を飲む。とても冷たく旨い。
 あたりには熊の姿も見当たらない。ただ、ときおり、風がさあっと頬をかすめていくだけだ。
 さぁ、気を入れてこれからの下山に備えなければならない。
 そういえば、先ほどの単独の女性の後ろ10mところに熊がいて、それを見た若い男性が声をあげたため熊が去っていったと言っていた。それは標高約900m地点のことだったらしい。フェルさんが700m地点で嗅いだ熊の臭いのその熊と同一かもしれない。ザックからホイッスルを取り出した。
 沢は登りよりも下りのほうが危険を伴うという。たとえ、この八の沢のような難度のない沢であっても、降りるときは充分に気をつけなければならない。
 しかも、過去において滑落事故で亡くなっているところでもある
 フェルさんも僕もザイルを持ってきているといっても、滝の大きさはかなりのものとなるだろうからして、懸垂で降りるにしては短すぎる。
 だから、やはり、踏み跡の先を考えながら歩く。
 途中、気持ちのいいシャワークライムダウンをしながら降りる。そこは残置ロープがあり、ホールドも問題なく、水の飛沫がかかって、とても素適なところでもある。
 しかし、さすがに三股の滝を降りたあたりから、いくらか右膝の違和感を感じるようになった。サポーターをしているから痛みはないのだが、如何せん渡渉の際に右足の踏んばりが少し利かなくなってきた。

 このあたりから、フェルさんの真価が発揮される。巻き道、渡渉など適確なルートファインディングである。沢の夜の帳が降りるのは早い。その前にテン場に戻らねばならない。
 そして、18時半、まだ明るいうちに着くことができた。
 時間的には厳しい面もあったが、すばらしい一日であったことは言うまでもない。

 三日目はテントを撤収し、帰るだけの行程である。今日も素晴らしい晴天の一日になりそうだ。昨日よりも更に暑くなりそうだ。
 
 このように素晴らしい三日間を過ごすことができ、フェルさんと偶然同行することになったNさんに深く感謝したいと思う。Nさんからは駐車場にて、出版された本を頂いたが、それを読むと海外の山にも赴かれている知識と経験の豊かな優れた岳人であることを知った。
 フェルさんにはまたまた写真を提供していただいた。この山歩きに美しい花を添えてくれたように思う。

                              (了)


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