奥手稲山〜お薦めできない帰り道

〜沢を下る〜

平成16年2月28日  同行者: なし
 奥手稲山は喧騒の札幌にあるとはおもえないほど静かな山である。すばらしいゲレンデもある。しかもすてきな山小屋があるから訪れる人が多いのもうなずける。

 平成16年2月の末、とてもよく晴れた気持ちのいい日だった。一人ぶらりと出かけることにして、奥手稲に向かった。
 ところが、スキーを用意して歩き始めたのはお昼の12時の5分前だった。その頃は山岳会にはまだ入ってなかったけれど、今なら完全にストップだろう。いや、小さな山なら下山時刻だ(~_~;)
 ぼくとしてはピークまで歩くという目的はなく、しばらく雰囲気を楽しめればそれでいい、という気持ちだった。出発点ではHYMLの仲間であるS氏ら二人もいて、彼らは奥手稲小屋までいくとのことだった。

 夕日の沢を彼らの前になり後になりのんびりと歩いていったのだが、春を予感させる日差しがまぶしくて昼寝でもしたいような気分だった。
 
 途中で彼らとは別れ僕は尾根にとりついた。時間もまだ早かったから、行けるところまで行こうと考えていた。
 いくつものトレースが伸びており何組かのパーティが降りてきた。満足そうな笑みを浮かべながらシュプールを描いていく。この山は急斜面はほとんどないから、とても滑りやすい。ぼくのような初心者でも安心して滑り降りることができる。

 ピークまでそれほど距離のない地点まできたとき、それでも時間はそれなりに経っていたからここでやめようと考えていた。そんなときにまた一組のパーティが降りてきて、「もうすぐなのだから、いってらっしゃいよ」と声をかけられた。

 決断したら、決断した自分自身が最後まで自身に責任をもつということだ。
耳を澄ましピークの方に目を向けると、山は僕を拒んでいないような、そんな暖かい雰囲気が漂っていた。

 ピークにはほどなく着いた。トレースが入り乱れてはいたが、ゆったりとした空間と時間がそこには満ちていた。



さて、降りるルートはどうしょう・・・。また、夕日の沢を歩いて帰るには時間もかかるだろう。沢には降りないで稜線をそのまま歩き標高点784mと標高点728mのコルから始まる北側の沢を滑り降りることにした。
 雪が深ければここの沢はほんとに小さな沢だから埋まっていることだろう。
なおかつ、林道まで歩くことなく滑り降りることができる。

 幸い同じことを考える人もいるものだ。トレースがある。
ここをノンストップで降りることができた。等高線のイメージほど急峻さはなく、至極快適な下りであった。
 ただ、今年のような少雪であったら危険が増すかもしれない。落ちて濡れでもしたら大変だ。そういう意味では「お薦めできない帰りみち」なのだ。(了)


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