初春の楽古岳
〜のんびりと春の山を楽しむ〜

   2008年 5月 4日 同行者: 札幌山びこ山友会
 本当はトヨニ岳からピリカヌプリを目指すはずだった。ところがである。野塚トンネルの北側に出たぼくらのパーティは山を見て唖然としたのである。
 「雪がない!!」
 いや、予想はしていた。今年は異常に雪融けが早かったから、ひょっとすると??とは思っていたし、
ダメかも、とは思っていた。その「期待」に100%応えるが如く、雪はなかった。

 前日の夜に翠明橋のエリアで一泊したぼくらは、周囲の暗闇のなかに浮かびあがる山の気配のなかに白き色がみあたらないことに憂慮していたのだが、それはやはり厳然たる事実だったのである。

 今回の山行は、実は同行のUenさんが道新百名山達成のための最後に残ったピリカヌプリのピークを踏むためであった。が・・・。

 いつもなら、こんなことはないのである。笹や藪が隠れるくらいのたっぷりとした雪があり、その雪の上をキックステップで軽快に歩いていくのである。
 それでも、Odashi会長を先頭に気をとりなおして、小沢づたいに藪のなかを歩いていくことにした。とにかく稜線まであがれば、雪が残っているのではないか、そう想ったのである。

 しかし、それは難行苦行の始まりだった。笹は背丈2m以上もあり、もちろん密集しているわけであり、そうやすやすと登らせてくれない。
 3時間かかって、高度を約200mくらい(ーー;)稼いだだけだった。登っても登っても雪はない。笹をかきわけ、かきわけ虚しいほどの努力を重ねた結果、ピリカヌプリは諦めることにしたのだった。

 密度の濃い笹によりわずか2mほど離れても、仲間の場所がはっきりと見えない。写真ではそうは見えないのだが、実はすぐ側のTADさんが笹によって隔てられている。
 さて、稜線に向かう尾根にのっていることはわかっても、現在位置はもちろんわからない。せいぜい、高度計を見ることによって、稜線まではまだまだ遠い先にあることが確認できるくらいのものだった。
 3時間歩いて直線距離にして何百mなのだろうか?いや、それは知らないほうがいい。
 ただ、O会長はこんな酷い笹薮のなかでもスイスイと歩き、ぼくらとの技術の差をはっきりと教えてくれたのである。

 決断したら早い。笹薮をワサワサと降りて駐車場に戻る。そして、楽古山荘に行くことにした。きまりだ。明日は夏道を使っての楽古岳、5月5日はアポイ岳の山行に変更したのである。

 楽古山荘に着いた我々は、暖かい春の日差しを浴びながら、早速宴会を始める(^^♪

 ところで、春のこの山荘、てんとう虫が集団発生している。一階の床という床、窓ガラスにもびっしりてんとう虫がへばりついている。まずはこの虫を掃除するところから始まった。

 夕食はO会長が食担だったのだが、なんと豪華なえび重・・・。それを手慣れた様子でささっと作る。美味い!なんと極楽なのか!苦あれば楽あり、とはまさにこのことか・・・。

 5月4日早朝、まずは朝食だ。その食担は僕である。インスタントラーメンに餅を入れたもの。まあ、味はそれなり。必ずしも失敗とはいえない。

 楽古岳は何年前だろう、息子と来て以来のことだ。そして、そのときは雨が振りだし、ピークには立ったものの眺望はまったくなく、ただ、登ったというだけのことだった。そのため、気持ちは昂ぶっていた。
ただ、靴が心配である。ピリカへ行くつもりだったから、雪の上の歩行ということで冬用の靴なのだ。雪の上では楽なのだが、土の上では硬い。靴擦れがきにかかる。
 そして、尾根に取り付く前に数度の渡渉があるのだが、雪融けで水かさが増していないか気にかかる。まぁ、行ってみるしかない。


 しかし、沢は増水はしていなかった。らくらく渡ることができたのである。
ところで、初春の楽古への道は気持ちがいい。樹木の葉もまだこれからであり、夏の鬱蒼とした感じがない。ふきもまだ出たばかり。ただ、この柔らかいふきを熊さんは狙っているのだ。大好物らしいから。

 日高の登山道のある山は例外なく急登がつきものだ。この楽古もそのとおりで、最後の渡渉を終えて、尾根にとりつくと急登がはじまる。まぁ、神威岳やコイカクの登りを味わっているから、驚くことはないのだが、やはり急だ・・・。
 それにしても、本当に雪がない。ぐいぐいと標高を稼ぐものの雪はあらわれてこない。たんたんと登るしかないのだ。

 一休みしたのは約1100mくらいで稜線に出たあたりだった。ここで雪らしい雪にであった。もっとも、雪があれば何か特別なことがあるのかといえばそうではない。いや、今回は特別なのだった。
 表面の雪は枝や葉が落ちていてきれいとはお世辞にもいえない。しかし、少し掘り下げれば真っ白いきれいな雪がふんだんにあったのである。
 そこで、O会長のザックから特別なものが出された。それは、コンデンスミルクという・・・。そう、このコンデンスミルクを使って、かき氷(雪)を作ったのである。

 絶品だ!!

 こんなに美味いものがどこにあろうか!たしかに、山頂ビールは美味い。しかし、ビール党ではない僕にとって、かき氷ほど美味いものはないのだ。
 
 ただ、かき氷のない山行では、山頂ビールが一番であることは言うまでもないけれどね。


 さて、ここからはまず肩にあがらねばならない。肩にあがってしまえば、ピークは目と鼻の先なのだ。
何年も前に息子と来たときは、ここからはガスがかかり雨まで降り出した。したがって景色はほとんど見えぬままピークに到達し、そのまま降りたのである。

 
 見た目と違ってしっかりとした道がついているので歩きやすい。一歩一歩間違いなくピークに近づいているので、とてもわかりやすい。
 
 ピークから北の稜線を見る。
すぐ正面の十勝岳。ここはかなり以前にhymlのganさんたち仲間と沢から登っている。ちょうど、十勝岳ピークの真下の沢を途中から右手のコルにぬけている。
 十勝岳から北はオムシャだろうか?その先がよく見えない。多分、はるか先の山はトヨニだろうか?


 ピークから南側の稜線だ。
O会長は何年か前にこの稜線を歩き広尾岳まで行っているそうだ。そのときは同じ5月でも雪は深く歩きやすかったが、なかなか厳しい山行だったそうだ。
 ぼくもいつかは歩いてみたいものである。

 春の陽射しは暖かい。うつらうつらと昼寝をする。
 時間はまだ早く、先に着いていたパーティからケーキもご馳走になり、山座同定をしながら至福のときを過ごす。
 遠くピリカヌプリを想いながら、そのピークに立てるのはいつのときか・・・。
                               (了)


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