いるかちゃんヨロシク妄想話

お題「その1」 『恋のライバル』

1.出逢い

12月 ―――― 倉鹿市に初雪が降った日



「春クン!!」

いつもの帰り道

突然現れた『山本まのか』は、いるかにとって最初で最後(?)の恋のライバルだった。



「山本君て、まのかちゃんのことどう思ってんのかねー」

お弁当の箸をおいて、湊はつぶやいた。

「好きなんじゃん」

「えっ!?」

「そうなの!?」

いるかのあっさりした答えに湊と博美は顔を見合わせる。

「だってさー、初めて会った時、春海すっごく優しかったもん。
 荷物持ってやるとか言っちゃって・・・」



まのかと出会って一週間



いるかは、まのかの『春クンに近寄らないでっ!!』パワーに圧倒されている。

「そっ それくらいで好きってことはないよ、ねっ 湊?」

「いるかちゃんっ!そんな調子だとホントに山本君とられちゃうよっ!!」

「って、何で湊が怒るんだよぉ〜」

「いるかちゃんてば、普段は気が強いくせに、まのかちゃんには弱いんだからっ!!
 剣道も恋愛も攻める時に攻めなきゃ!!」

「そうそう、恋愛は早い者勝ちよっ!!」

「レ、レンアイ、レンアイって・・・・・」

いるかは、頬を赤く染めて口ごもった。

(あーあ、照れてる場合じゃないのにねー)

湊と博美は深いため息をついた。

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2.明暗

リーン ゴーン

リーン ゴーン



「春クン! 一緒に帰ろ ねッ はやく はやく」

「ああ・・・」

春海は、いるかの方をチラッと見たが、いるかは気づかない。



放課後

2年雪組の教室で、いるかは机に突っ伏したままだ。

「いるかちゃん! ちょっと剣道の稽古つきあってよ」

「へっ!? 部活は試験休みじゃ・・・」

いるかが顔を上げると、湊がニコニコしている。

「どうせ勉強なんかしないでしょっ そんな暗ーい顔してるより体動かした方がいいよ」

湊はいつになくご機嫌の様子で、いるかの肩をバシッとたたく。

「フフフッ・・・ 実はね、山本君に頼まれたの」

「春海に?」

「とりあえず、まのかちゃん送ってから来るって。鹿鳴会メンバーの特別稽古ってことで
 道場の使用許可もとっててさー。まぁーたく、職権乱用、公私混同もいいとこだよねー」

湊は片目をつぶり微笑んでいる。

「ありがとっ 湊!」

いるかは湊に抱きついた。



「おっ!いるか、ごきげんだなぁ〜」

「無理ないか、春海からのお誘いだもんな」

「俺たち春海が来たらさっさと帰るから」

いるかと湊が道場に入ると、先に来ていた一馬、進、兵衛の3人がニヤニヤしながら準備運動をしていた。

「な、何言ってんだよぉ〜、もぉ!! あんたたち、まとめてかかってきなっ!!」

いるかは竹刀を構えた。



ガラガラ

バーン



(い、いるかちゃん、ちょっとは手加減してあげて・・・)



「いて――――!! 参った」

兵衛は、床に倒れたまま降参のポーズをとっている。

「お、おれ、日向と稽古するよ」

一馬は、湊のうしろに隠れてしまった。

「いるかの相手がつとまるのは春海くらいだぜ」

進も、これ以上カンベンしてくれといわんばかりだ。



ボロボロにやられた3人とは対照的に、いるかは息ひとつあがっていない。

が、さっきまでの威勢のよさはどこへやら

ため息まじりに面をとると、おもり入りの防具を静かにはずした。

「春海、来ないね・・・」

(やっぱり、まのかちゃんに引き止められたのかなぁ)



「いるかちゃん・・・」

「春海のヤツ何やってんだか」

「だいたいアイツの方から稽古に誘っといてさ」

「ったく、らしくないよなっ」

(これじゃあ、いるかが傷つくだけだぜ)



非難の嵐が吹き荒れる。



「あっ あたし、お腹すいちゃったから、みんなも帰ろうよ」

無理に明るく振舞おうとするいるかに、みんなは何も言えなくなってしまった。

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3.一言

「いるかっ!!大変だっ!!」

銀子と杏子が、道場に駆け込んできた。

「銀子!」

いるかにやられてのびていた兵衛が飛び起きた。

「春海がまのかを人質にとられて、但馬の番長グループに連れて行かれたんだっ!!」
 倉鹿神社の裏で、真樹が見たって!」

「春海・・・」

いるかは、剣道部を飛び出した。

「いるかー!気をつけろっ!ヤツらはナイフを持ってる!」

「あたしらも行くよッ」

銀子と杏子が追いかけるが、いるかの姿はもう見えない。

「おいっ、俺たちも後を追おう」

一馬、進、兵衛、湊も走り出した。



倉鹿神社は、うっそうと茂った森の中にある。

その神社の裏庭は人目につくこともなく、修学院と但馬館の非公式な試合

――――つまりケンカにはうってつけの場所だった。



「ケッ ヘヘヘ こいつの顔にキズをつけたくなかったら、おとなしくするんだな」

スキンヘッドの男が、ガムをクチャクチャさせながら、まのかの顔にナイフを当てている。

少し離れた所で、春海は十数名の不良たちに囲まれてしまった。

「フッ、さすがだな。彼女がこんな目にあっても顔色ひとつ変えないとは・・・
 えぇっ!! 山本会長!!」



「その子は、ただのいとこだ」



――――ただのいとこ



その一言がまのかの胸に突き刺さった。



冷静沈着な態度が、番長を苛立たせる。

「ケッ やろうども、かかれっ!!!」

でりゃああっ

木刀を手にした男たちが春海に襲い掛かる。

が、スッとかわした。

人質がいても決して動揺を見せない。

(ケッ ウワサ通りの冷血漢だな・・・)



「春海ぃ――――っ!!!」



全力疾走してくるいるかの声が響いた。

「いるか、どうして・・・危ないっ!来るな――――っ!」

春海の狼狽ぶりに、番長以下子分たちは、目をパチクリさせた。



バキッ

いるかのとび蹴りがスキンヘッドの子分をぶっ飛ばす。

「まのかちゃん!大丈夫!?」

「如月さん・・・!!」

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4.線

「な、なんだ、このチビッコはっ!」

番長は、いるかの顔を知らなかった。

「なっにい――――っ!! あたしは、鹿鳴会会長 如月いるかだっ!!」

チビッコと言われて、いるかは激怒する。

「ケッ 怨み重なる修学院の会長が二人そろいやがったんだ
 好都合ってもんよ!まとめてメッタ打ちにせえっ」

うおおおおお!!!!!

春海を囲んでいた男たちは、一斉にいるかに攻め寄せる。

(同じ会長なら、女を相手にした方が楽に勝てる・・・)

――――彼らの浅はかな考えだった。

「いるかっ!」

春海もいるかのもとへ急いだ。

バキッ

ドスッ

乱闘が始まった!



「春海、ここはあたしにまかせてっ!! まのかちゃんを連れて逃げてっ!!」

「何言ってんだっ!おまえをおいて行けるわけ・・・」

しかし、まのかは騒ぎながら勝手に動き回る。足手まとい以外の何ものでもない。

「きゃあぁぁぁ、春クン、そこよっ はりとばすのよっ!!」

「如月さんすてきっ 但馬なんかひねりつぶすのよっ!!」

「だ――――っ うるさいっ!! 春海っ早く行けっ!! 邪魔だっ」

まのかをかばいながら防戦するのは明らかに不利だ。

(このままじゃいるかまでやられちまう・・・)

春海は仕方なくまのかを抱きかかえ走り出した。

「しっかりつかまってろ!」



ドス

ドコーン

バギッ

いるかが、ザコどもを投げる! 蹴る! 張り飛ばす!



「いるか――――っ!!」

銀子と杏子が駆けつけてきた。

「げっ春海のヤツ、ハマチまのかをお姫様だっこしてやがる!!」



「春海――――っ!! 応援に来たぜ――――っ」

あとからやって来た鹿鳴会メンバーも、春海に抱かれキャピキャピしているまのかを見て、思いっきりひいた。

向こうでは、いるかがたった一人で大勢のチンピラを相手に格闘しているというのに・・・



「みんな―― 待ってよぉ! 袴だと走りにくいんだから――!」

湊もやっと追いついてきた。



春海に、冷たい視線が集まった。

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5.肉まん

「死ねえ――――っ!!」

但馬の不良たちが木刀を振り上げ次々といるかに襲いかかる。

だが、いるかの強さは圧倒的だった。

相手の太刀が振り下ろされる瞬間スッとかわす。

振り向き様に木刀を奪い取ると、男は宙に舞い、地面に叩きつけられた。

「すげえ、こりゃあ、太刀取りだぜっ」

一馬が感心している。

「ああ・・・」

春海も参戦したかったが、右腕にまのかがすがりつき動けない。

修学院の面々は、あまりにも見事な闘いぶりに加勢に行くのも忘れていた。



白い胴着に袴姿で大の男たちを倒す彼女はカッコイイ。

そして、美しかった。

軽やかな身のこなしは、闘いの中にも女性らしさを感じさせる――――



「やめろッ」

番長が叫んだ。

子分たちの動きが止まる。

「ふんっ、やっと降参かい?」

いるかは余裕の表情で言った。



実際、ほとんどのザコが倒れていた。



「気に入った!! いるか、おまえ俺の彼女になれっ」

「へっ???」

「はあぁぁぁ???」

番長の告白に驚きあきれるいるかたち。

「兄キ、気でも違ったのか・・・」

「うるせえーっおめえはすっこんでろい――――っ 俺は本気でいるかに惚れたんだっ!!」



一馬を筆頭に、皆ムンク顔になっていた。



「・・・わかった。番長、あたしと決闘しろっ! あんたが勝ったら彼女になってやるよ
 
ただし――――



あたしが勝ったら、肉まん10コ、それにあんまん10コつけてもらおうじゃん!!」



いるかは、ちょうどお腹もすいてきたし、我ながらいい事を思いついたと、得意気になっていた。



「あのバカッ!!!!! 何考えてんだ――――っ!!!」

春海は、怒りでわなわなと震え、真っ赤になっている。

「あいつは、ハラが減ってるだけだよ・・・」

「大丈夫さ、いるかが勝つに決まってる。あいつも番長なんかと付き合う気はさらさらないって・・・」

進と兵衛があわててフォローした。

どうどう

一馬も春海の気を沈めようと必死だ。

「フン」

(あいつ・・・少しは自分が女だって自覚しろっつーのっ)



「よっ!いるかっ!モテモテじゃん! あたしらにも肉まんよこせよっ」

「弁当10日分も賭けろよ――――っ!」

杏子と銀子は完全におもしろがっている。

「いるかちゃーん!がんばって――――っ」

「キャー! 如月さんっ かっこい――――!」

女性陣は盛り上がっていた。

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6.勝負

「おまえは俺の女だぁ――――っ」

野獣と化した番長がいるかに飛びかかる。

タンッ

いるかは鮮やかにジャンプし、番長を飛び越える。

が、あろうことか着地に失敗。自分でずっこけてしまった。

「うぎゃぁ」

「いるか――――っ 好きだあぁぁぁ」

ドサッ

番長の巨体がいるかを押し倒した。



男が、いるかを組み敷く――――



いるかは、その細い腕を男の首にまわし、彼の顔を引き寄せる・・・

二人の足が絡み合う・・・

(い、いるかが男と抱き合ってキスを求めてる・・・)

春海は、あまりのショックに呆然と立ちつくしていた。



「――――ヤバイぞッ!!」

兵衛の声にハッと我に返った春海は、まのかを振り切り、いるかのもとへ駆け寄った。

いるかの体に覆いかぶさる番長を引き剥がし、襟首をつかむと拳を振り上げる。

「やめろッ」

進と一馬が今にも殴りかかろうとする春海を押さえ込んだ。

「なっ なぜ止めるっ!?」



「――――もう落ちてるぜ」

兵衛は白目をむいて気を失っている番長をそっと寝かせた。

「いるかっ!絞めすぎだっ! マジで死んじまうぞっ!!!」



「へへーんだっ あたしにケンカ売るなんて100年早いっ!」

いるかは、ピョンっと飛び起きると袴についた汚れを払った。

「こいつは告白しただけだろ・・・。ケンカ売ったのはおまえじゃねーか」

番長も可哀相なヤツだと兵衛は同情した。

「チビッコって言っただろー」

いるかは、『チビ』と言われた怒りと肉まんのために勝負しただけで、番長の告白なんてどーでもよかった。



「うわあぁぁ 兄キがやられたあぁぁぁ」

番長の子分たちは、一人残らず逃げ出した。

「??????」

春海は、事の成り行きを理解できない――――



「春海、おまえ、変な想像してただろー」

進がニヤニヤしながら言った。

「ま、あの体勢じゃ無理もないけどな」

一馬も笑っている。

「袖車絞(そでぐるまじめ)だ」

兵衛が説明する。

「――――柔道の寝技だよ。冷静に見れば分かるだろ、おまえ程の男が・・・。
 いるかはヤツの首しめてただけだ。しっかし見事に決まったなー。足の固めも完璧だ。
 いるか、おまえ柔道部にも顔出してくれよ」

「やーだよっ 柔道はやんないのっ さっきの技はテレビで見たのやってみただけだい!
 次からは手加減す・・・・・えっ!?」



――――春海の両腕がいるかの華奢な体をやさしく包み込んでいた




「心配させやがって・・・・・」

耳元でそっとささやく。

「はっ はるうみっ どうしたの?」



ぎゅ



春海はいるかを強く抱きしめた。

「――――あんなヤツの彼女になってやるなんて言うなよなっ」

「あっ あれは・・・」

いるかは春海の顔を見上げた。



二人は無言で見つめ合う。

甘く切ない彼の瞳 ――――それは、いるかだけに向けられる特別な想い・・・



(あ――――っ)

修学院のメンバーは、みんな顔を赤らめた。

春海の顔が、唇が近づいてくる・・・・・



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7.仲

「わああっ」

番長が目を覚ました。

目の前でいきなり展開されているラブシーンに驚きの声をあげる。

いるかはハッとして春海の腕をふりほどいた。



「なんだ、おまえ生きてたのか」

絶妙のタイミングで邪魔され、春海はぶっきらぼうに言い放った。

「勝手に殺すんじゃねえっ ・・・って、おめえら、そういう仲だったのか!?」

「見ての通りだ」

春海はこれみよがしにいるかの肩に手をまわし、不敵の笑みをうかべた。



「山本、きさま優等生のくせに二股かけてんのか?」

「なっ なんだとぉ!」

「さっきまで、てめえとおそろいの頭したねぇちゃんと同じことしてただろーが!」

ラブラブの二人にムカついた番長は、デタラメなことを言う。

単なる嫌がらせだった。



「へっ!?」

いるかは目を見開いた。

「ちょっとぉー 春海っ あんた、あたしを待たせといて、まのかと何やってたんだよっ!!」

「い、いや、一緒に帰る途中こいつらに拉致されて・・・ てめえ、いい加減なこと言うんじゃねえっ!!」

「ケッ 女にうつつをぬかしてボーッとしてやがるから捕まったんだろーが!」

番長の言うことにも一理ある。

「今日のところはこれくらいでカンベンしてやらあ。だが、俺はいるかのことあきらめねーからなっ
 この勝負おあずけだっ!!」

いるかにやられて失神していたにもかかわらず、番長は勝ち誇ったように大声で言った。

「いくぜ、やろうども」

しかし、子分たちはすでに退散していた。

「チッ・・・ あいつらヤキいれたる」

番長は小走りに去っていった。

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8.ダイタン

「しまった!肉まん!」

いるかが番長を追いかけようとするが、春海に腕をつかまれ引き戻される。

「ばかやろう! また押し倒されたらどうするんだっ 肉まんくらい俺が一生食わせてやるよ!!」

(春クン、それって、プ、プロポー・・・・・)



「ダイタン・・・」

杏子が赤面して小さくつぶやいた。

「さー そっちも負けないで! お杏が昔から進にあこがれてたんは知ってんだぞ! ほれ!」

銀子は杏子の背中に軽くケリを入れる。

ドン

「おっと」

よろけた杏子を進がささえた。

「お杏はこう見えても器用なんだ。料理もうまい。いるかなんかよりよっぽどいい嫁さんになるよ」

「・・・・・」

進は面食らった。



「銀子、俺・・・俺も・・・そのー 炊事洗濯は得意だから・・・・・」

兵衛は、ちょっと恥ずかしそうに言った。

「フッ 日曜大工もまかせたよ」

銀子はクールにこたえる。



「あたしたちは、家事は分担しましょうね」

「ああ」

湊と一馬も微笑み会う。



春海に刺激され、次々と将来を誓い合う(?)カップルたち

(この人たち、ついていけないわ・・・)

ただ一人、まのかだけが唖然としていた。

(類友かしら?――――みなさん奥さんの尻に敷かれそうね・・・)

クスッと笑い、春海といるかの方に目を向ける。



「・・・一生って、そんなにいらないよっ あたしは今食べたいのっ」

「わ・・・ わかった、わかった、帰りに買ってやるから・・・」



(やっぱり春クンが一番苦労しそうね・・・)

まのかは、二人のうしろ姿を暖かく見守った。

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9.元気

「さよなら――――っ お元気でね――――っ」

ガタン ガタン

まのかを乗せた列車が動き出す。



次の日、両親はまだ海外出張中だったが、まのかは東京に帰ることにした。

鹿鳴会のメンバーは、駅まで見送りに来ていた。



「・・・行っちゃったか」

一馬がつぶやく。

「まぁ、昨日の春海を見ればなー」

兵衛がしみじみと言った。

「まのかちゃんはいなくなったけど、番長のヤツはいるかのことあきらめないって言ってたぜ」

進がいたずらっぽく笑う。

「大丈夫、また首しめてやるって」

「バカッ あの技は二度とかけるなっ 今度こそ俺がブン殴っててやるさっ」



「あんまり刺激すんなよ・・・」

一馬が進をにらんだ。

「――――帰ろっか、明日から期末だしな」

兵衛が話題をかえる。



「え――――っ??? 忘れてた・・・期末テスト、どーしよう・・・」

「ったく、おまえってやつは・・・ ヤマはってやるよ」

「え〜! ほんとっ ありがとっ はるうみっ」

いるかが春海に抱きつく。

「おい・・・よせよっ」

と言いつつも、うれしそうに微笑む彼。

「春海のやつ、だいぶ素直になったな」

「ああ、まのかちゃんのおかげかもな」

「でもよー、あいつが素直だとからかいがいがないよな〜」

ハハハハハ

3人とも楽しそうに顔を見合わせた。

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10.馬鹿

「わぁっ いるかちゃん、ひさしぶりィ」

春海の家にいるかがやってきた。

「徹、チャンバラゴッコは宿題が終わってからだぞ」

「ぼく、もうおわったよ」

「・・・いるかの宿題だ」



冬休みの宿題を一緒にする――――手伝わす約束だった。



「つまんないなー。いるかちゃん、何でずーっと来なかったの?
 おにいちゃんは、いつもまのかちゃんと一緒だったし――――」

「バカッ よけいなこと言うなっ!」

「ふーん、家でもベタベタしてだんだー」

トゲのある言い方に冷や汗が出る。



「まのかちゃんさー、おにいちゃんのお嫁さんになるんだって。
 そしたらぼくのおねーちゃんになるんだよって言ってた」

「・・・そっ そっか・・・ 知らなかった そ そうだったのかあ・・・」

「わっばかっ 誤解すんなっ ・・・まのかが勝手に言ってただけだろっ! 俺は知らねーぞっ」



「いるかちゃん、おにいちゃんなんかほっといてさー、ぼくのお嫁さんになりなよっ
 そしたら、いつでもチャンバラゴッコできるよっ!」

「へっ!? よーし! じゃあ、チャンバラで徹くんが勝ったらお嫁さんになってあげる!
 そのかわり、あたしが勝ったら・・・」



いるかは、食卓の上にあるおやつに目を向けた・・・



「馬鹿・・・・」



――――番長より手強いライバルかもしれない・・・



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あとがき

はじめまして。 さきです。

お題「その1」の妄想話、「恋のライバル」を読んでいただき、ありがとうございました。



カレーのルーさまに、ちょっとした妄想ネタをメールしたのが、2007年3月末。

初めてのメールで緊張しました(笑)

そのお返事の中で

「ご自身で書き起こしてみると面白いですよ♪」と言われ、

自分で書く! なんて考えてもみなかった私が、いきなり「お題」に挑戦することになりました。

いやいや、はじめから「お題」を意識してたんじゃなくって

妄想をノートに書いていくうちに「お題」を思い出し、無理矢理こじつけたってとこです(汗)

だって、「いるヨロ」ファンサイト巡りにハマッてたから、「お題」、憶えてたんですねー。

逆に、「お題」につなげようと考えて、ストーリーがひらめいたり。

いや〜、実際に自分で書いてみて、ホント楽しかったです♪



さて、妄想話の中で、一番ありえねーって思ったのが、「8.ダイタン」の湊のセリフ

「あたしたちは、家事は分担しましょうね」

・・・って、中学生でこんな現実感あふれること言うかぁ?



結婚6年目の主婦(2児のママ)の生霊がのり移ったとしか思えん・・・



ではでは、お題「その2」の妄想に入ります・・・



2007.4.27 さき



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