いるかちゃんヨロシク妄想話

巧くんヨロシク

2.誇大妄想

里見学習院秋の球技大会――――

球技大会といえばバスケット!クラス対抗の勝ち抜き戦だ。



「おりゃあ!!」

ピ――――ッ

「やったあ――――ッ いるかちゃん最高!!」

「キャアアア! トリプルスコアよぉ!」

「ヘヘッ どーんなもんだいっ」

大歓声の中、いるか率いる1年1組の女子がぶっちぎりの優勝を飾った。



「いるか――――っ 男子の決勝はじまっちゃうよ――――っ」

「早く、早く」

「あっ 今行く!」

一子と桂に呼ばれて、いるかは男子の試合会場へ行こうとした。

が、

「山本会長の出番よぉっ!!!」

キャ―――― ドドドッ

女生徒たちの集団に踏まれて、いるかはお好み焼きになっていた。



男子決勝は1年2組対1年1組。

学習院の二大スター、山本春海と東条巧巳の対決とあって

コートの周りには人だかりが出来ていた。



「キャ――――ッ 山本会長――――ッ」

「山本くん、すごいッ」

春海は次々とシュートを決め、ギャラリーから黄色い歓声があがる。

おし合いへし合いしながら春海を応援する女生徒たちの中

まのかは一番よく観戦できる場所をキープしていた。



「キャ――――ッ そこよっ!春くんステキ! もっと入れてェ」

まのかの声援はひときわよく響く。

春海は、とんでもなく不健全な想像をめぐらしてしまった。



(ま、まのか・・・ いや、そーゆー意味じゃねえよな。でも、どうせなら、いるかに言ってほしいよなあ)

試合中にもかかわらず、ふしだらな妄想にふけると

自分がボールを手にしていることを忘れてしまった。



そのわずかなスキを巧巳は見逃さない。

春海からボールを奪うと、あっという間にダンクシュートを決めてしまった。

(し、しまったあぁ!!)

春海が我に返り、邪念をふり払おうとしたそのとき



「巧巳ぃー! いいよぉ! 最高っ!!」



いるかが、木の上から大声で巧巳を応援し、手を振っていた。

(い、いるか・・・ おまえ、何てことをっ!!)

春海は、またしてもあらぬことを思い浮かべていた。



「やったぜ!カップル優勝!」

「やったね!」

巧巳といるかは、どさくさに紛れてひしっと抱き合い、無邪気にはしゃいでいた。

試合後半、ミスが目立った春海に対し、容赦なくシュートを決め続けた巧巳は

見事、男子優勝を勝ち取ったのだ。



「ねぇ、やっぱり・・・いるかちゃんの相手は東条くんなのかなぁ」

「じゃあ、山本くんはフリー?!」

「キャ――――ッ 山本くん、あたしのタオル使ってェ!」

春海のもとに女生徒たちの波がどっと押し寄せた。



「うーん、これは、ゆゆしき問題だわ」

まのかの瞳がキラリと光った。


1.合縁奇縁 巧くんヨロシク トップメニュー 3.有難迷惑