協調と妥協

協調  …  力を合わせてことをなすこと
利害の対立するものが、力を合わせてことにあたること
妥協  … 対立していた者の一方が他方に、あるいは双方が譲ることで意見をまとめること

  私たちの日常生活や仕事は利害対立の連続であり、それらの調整の上に成り立っているといってもよいでしょう。 利害対立といって言い過ぎであれば、意見の相違、感覚の相違と言ってもいいでしょう。 社会生活を営むうえで、利害対立は避けられない現実です。 現実の生活においては避けられないことを避けようとするから、問題がよけいにややこしくなるということが、よく見受けられます。 そこでこの利害を調整することが必要となり、その一つの方法として「協調と妥協」という方法があると思います。 利害を調整できなければ、個人のレベルでは喧嘩、社会のレベルでは社会不安、国のレベルでは戦争に最終的には訴えることになります。 

  協調とは双方が相手の意見を尊重し、しかも自分の意見を譲ることなくお互いの話し合いで一致点を見いだし、その一致点に向かって協力することを言います。 お互いの意見の相違を認め合っているわけですから、後にしこりやわだかまりが残ることは少なくなるのです。 (しこりやわだかまりがなくなるとは言いませんが。) 

  他方、妥協とはどちらか一方が自分の意見を取り下げて相手の意見を全面的あるい大部分を受け容れることになるので、意見の通らなかった方にしてみればおもしろいはずがなく、積極的に協力する気にはなれず、双方にわだかまりが残ることになってしまいます。 その結果両者の良好な関係は必然的に続きにくくなります。

  ここで大切なことは協調と妥協の違いを理解して、実生活において相手によって使い分けることです。 妥協してものごとがうまくいくと次にも妥協しがちになり、妥協が妥協を呼び自分という存在がかすんでしまいます。 妥協は見かけ上はいいことのように思われがちですが、当事者同士お互いによけいな気を使い合ったりして、お互いに疲れてしまいます。 これに対して協調してものごとに当たるときは、お互いの相違点をよく分かっているのでよけいな気を使う必要もなく、自分の意見を率直に述べあえます。 妥協は相手の人格を無視することであり、協調はお互いの人格を認め合うことになります。 協調はますます良い結果をもたらし、妥協は長い目で見れば失うものばかりです。 

  決して妥協してはいけません。 お互いに話し合って協調することをすすめます。 ただし、職場においては「職務権限」というものがあり、自分の意見を述べることは差し支えありませんが、上司と意見が異なったときは上司の意見に従うことは言うまでもないことです。 これは妥協ではありません。

  とくに日本人の場合は伝統的に妥協はしても、上手に協調することが不得手ですので(日本特有の「和の精神」が強く影響していると思います)、協調の仕方を身につけておけば個人的にも、仕事の上でも大変有益な武器になるはずです。 自分の本心を話して受け入れてもらえないのなら、それはそれで仕方のないことだと思います。 人は自分以外の人をコントロールすることはできないのですから。 他人の心は自分にはどうすることもできないのですから、どうすることもできないことで悩むだけ無駄なのです。 無駄だと分かっていても悩まずにいられないのが人間だとは思いますが。 

協調できる人は個人的問題においても、仕事においても、悩むことは少なくなると思います。 人間関係での悩みを少なくしたければ、協調の仕方を覚えることです。 見せかけだけの協調は生きることをつらくするだけですから、決して見かけだけの協調はしてはいけないと思います。 見せかけの協調が妥協なのです。 八方美人はこの典型的な例でしょう。 妥協する人は自信を持てないから妥協してしまうのです。 自分に自信があれば言いたいことは言えるはずです。 自分に自信を持てないのに、相手によく思われようとするから妥協せざるを得なくなるのです。 この件に関しては、あとで詳しく書く予定です。

  私の経験から言わせてもらえば、自分は協調しているつもりでも妥協してしまっていることがあまりにも多すぎたように思います。 だからなにをしていても、なにかもうひとつ納得できなかったのだと反省しています。 やっぱり協調するには、自分なりの生き方、自信が必要なのですね。 逆に言えば自分なりの生き方がないのに協調しようとするから、妥協せざるを得なくなるのだと思います。

 ただし、どうでもいいようなことで妥協しても、それにはあまり問題がないと思います。 大切なことは、大切なことで妥協すると、そのような自分を自分自身で嫌うようになり、自信を失っていくということです。 問題にぶつかったときは、これは妥協してもいいのか、妥協してはならないのかを見極めることでしょう。

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