自分を相手に理解させるより、相手を理解する方が人間関係はうまくいく

 だれだって「自分のことを理解して欲しい、自分のことは分かって欲しい」と思っています。 人間は自分を受け入れてもらえないことよりも、自分のことを分かってもらえないことの方がつらいのではないでしょうか。 

  いまの若者の悩みを見聞きしていると、あるグループに入れてもらいたいのだけれども、そのグループができあがってしまっていて自分をまったく受け入れてもらえないことがあります。 そのグループの人たちにとってはいまさらよそ者が入ってきて、自分たちのグループが乱されたり、よけいな気を遣うことが嫌なのでしょう。 グループが排他的になってしまっているのです。 

  人間関係で苦しむことの中には、自分を分かってもらえない、自分を受け入れてもらえないということが多いはずです。 そんな人にかぎって自分を理解してもらおうとばかりして、結果的に自分を相手に押しつけようとしている人も多いのではないでしょうか。 もちろん本人は、そんなふうには決して考えたこともないと思いますが。 自分を理解させようとだけ努力するから、相手の話を聞く耳を持てなくなってしまい、「あいつは自分勝手なやつだ、自分のことしか話さない」と言われてしまうのではないでしょうか。 自分を理解してもらおうとすればするほど、自分のことだけを話さざるを得なくなるのですから。 結果的には相手をけなすことも多くなってしまうのです。

  人間は自分の自慢話ばかりしたり、自分のことばかり話す人は嫌われるのです。 こんなことはだれでもが知っていることです。 自分を理解してもらおうとすれば、いきおい自分のことを話すことが多くなり、そして嫌われていくことが多くなってしまうのです。 自分を理解してもらおうとすればするほど、嫌われてしまうのです。

  この矛盾を解決するには、どうしたらいいでしょうか。 それには自分を理解させることよりも、相手を理解することを優先させることです。 相手の考え方も聞こうとしないで、あるいは分からないままで自分のことを話してしまうから、嫌われてしまうのです。 だれでもが自分を理解して欲しいと渇望しているのですから、相手の話を聞くことによって相手がどんな考えを持っているのかが分かり、結果として自分は労せずして相手のひととなりを理解できるのです。 そうすれば相手からみれば、「あのひとは自分のことを理解してくれた、または理解してくれなくても言い分は聞いてもらった」となり、親近感を持ってくれるはずです。

  そうすれば自分は、なにを話してはならないのかが分かることができるのです。 または、なにを話せばいいのかも分かるのです。 「話し上手は聞き上手」ということは、こういうことではないでしょうか。 

  これは私が言っている「自己主張しよう」ということに反するようですが、決してそんなことはないと思います。 理由は、自己主張とは「自分はこう思う」と言っているだけで、それを相手に認めさせることではないからです。 

  人の心を変えようとしても、相手がその気にならなければ変えることができないのです。 その変えられるか変えられないか分からない人の心を変えようとするから、説得しようとするから、よけい疲れたり気を遣ったりしなければならないのです。 いくらあなたの話を聞いても、説得されても心を変えるかどうかは相手次第なのです。

  相手を理解することは、自分が相手の言いなりになることとは違います。 このことは勘違いのないようにして下さい。 相手の話を聞いたから相手に従わなければならないということは、どこにもないのです。 ここを勘違いするから、他人の話を聞けなくなってしまうのだと思います。 自分の言いたいことを言わないと、相手になめられると勘違いするからいけないのです。

  相手を理解するとは自分を知ることでもあると思います。 本当の自分をも知らないで、相手に自分を分からせようとするから人間関係がこじれてしまうのではないでしょうか。 相手がなぜそのように考えるか、なぜそのように行動するか、その動機が分かれば人間関係はそんなにぎくしゃくしなくなると思います。 そうすれば、いままでは許せなかったことも、許すことができるようになるかも知れません。 そのことは自分が変わっていくことでもあるのです。 人の心理さえ分かれば、よけいなことを考えたり、思い煩ったりすることも少なくなるはずです。

  「自分を理解させることより相手を理解すること」、これが人間関係の基本だとも思います。 それさえできれば、相手に対する態度も変わってくるはずです。 そうなればお互いの人間関係は、いままでとは違ってくるのではないでしょうか。 相手が変わることばかりを待っているから、人間関係がどうにもならなくなるのだと思います。 思い切って自分から変わってみませんか。 それが勇気のある行動だと思います。 本当の勇気とは、このようなことを言うのだと思っています。

  このことができるようになれば、自然に自分の真の姿も見えてくると思います。

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