今日一日だけだったら生きられる

 これまでは主として、つらくならないための方法についていろいろと書いてきましたが、現実には「つらくてもう生きていくことに耐えられない」人も大勢いることと思います。 そんな人はどうしたらいいのでしょうか。 どうすれば、そのつらさから救われるのでしょうか。 私には、これと言った特効薬のような方法は持ち合わせていませんが、自分の体験としてこれだけは言えると思っています。

  生きることがつらくなると、なにもする気になれず、なにをしても精神を集中することは無理です。 なにもしないと、心は疲れているのに体があまり疲れず、寝付きが悪くなってしまいます。 このような状態が続けば精神症になっても不思議はないのです。 生きるのがつらいときは、この苦しみが一生の間続くように思えるものです。 しあわせなことはすぐに崩れそうに感じられるのに対して、つらいことはいつまでも続くように感じるのが、正常な心の持ち主ではないでしょうか。 だからこそ、その重みに耐えかねて自殺の道を選ぶひともでてくるのです。 自殺もできない人は、自暴自棄になって生きているのではないでしょうか。  

  このような状況に対する私の考えは、たったひとつしかありません。 それが当たっているかどうかも分かりません。 なにしろ、私はその方法しか分からないのですから。 その方法とは「今日一日だけを生きようとすること」、これだけです。 つらいときには、今日一日だけを生きることも難しいのですから。 明日のことを考えれば、このつらい日が永遠に続くようにみえるのに決まっています。 1ヶ月後のことを考えても同じでしょう。 1年後を考えれば、いまよりもっと悪い状況を考えるでしょう。 そのことが人間を底なし沼に追い込んでいってしまうのです。 だから、無理にでも今日一日のことだけを考えることが重要なのです。 明日があると考えるから、生きることがますますつらくなってしまうのです。 今日一日だけなら、どんなにつらくても生きていけると思います。 今日一日も耐えられないという人には、私には打つ手がありません。

  今日一日だけを生きて行くには、とにかく体を疲れさせることです。 自分を大切にしろ、自分をいじめるなと言っておいて、へとへとに疲れるようにしなさいとは矛盾するようですが、私にはこの方法しかなかったのですから。 疲れればものを考えることもいやになります。 考えてしまうから、将来を悲観的に見てしまうのであれば、考えない方がましなのです。 疲れていれば、眠りたくなくても眠ってしまうはずです。 そして朝まで眠りましょう。 そのつぎの日も、今日一日しかないと考えてとにかく体を動かして疲れることです。 これを続けることです。 そのあとのことは、生きることがつらくなったら自分の体で試して納得してください。

  酒を飲んで一時しのぎをしても、酒が覚めたときにはかえってむなしさが大きくなっているものです。  だからまた酒を飲んで自分をごまかし続け、ついにはアルコール中毒にもなり、人生を台無しにしてしまうのです。 一時的には酒を飲んで憂さ晴らしをしてもかまいませんが、自分と向き合うことを逃げてはいけないと思います。 逃げれば逃げるほど、問題は大きくなるだけです。  それからもうひとつ重要なことは、過去のことを後悔しないことです。 過去は過去のこととして、ありのままを認めることです。 いくら今日一日をがんばっても、過去の事実を認める勇気がなければ私のお奨めする方法も効果は大分薄くなると思います。

過去の事実は、どうすることもできないのです。 それをなんとかするには、自分の考え方を変えるしかないのです。 自分の考えは変えない、そして過去を変えたいといっても、それは不可能です。 不可能なことに挑戦するエネルギーがあるなら、可能なことに挑戦する方が自分のためになると思います。

  生きることをつらくするのも、しないのも自分の考え方次第だと思うのです。 自分がつらいことよりも、つらいことをどのように考えるかによって、そのつらさの度合いは大きく異なってくると思います。 同じ形のものでも、縦から見たり、横から見たり、斜めから見たりすれば違う形のものに見えるのと同じことなのです。 同じ重さの苦しみであっても、考え方によっては非常に重くも感じ、またそれほど重く感じないかもしれないのです。 ただ悩んでいるときには、実際以上に苦しく感じるのではないでしょうか

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