自分の人生はだれが決める

 このようなあたりまえのことを、なぜ書かなくてはならないのでしょうか。 それは大人になっても、自分で自分の生き方を決めかねている大人が多すぎると思うからです。 親の子離れ、子の親離れがうまくいっていないことが多いからです。 いま新聞紙上をにぎわしている新潟の少女誘拐犯やそのほかでも、親子の異常な関係がとりざたされているではありませんか。 あれは特殊なケースなのでしょうか。 私にはそうは思えないのです。 あのケースは、たまたま表沙汰になっただけだと思うのです。 表面にでない場合が圧倒的に多いのではないでしょうか。 そして、自分だけは大丈夫だと考えているのですから恐ろしいのです。 他人事だと思ってみているから恐ろしいのです。

  子供の小さいときは親が子供の進路(育児を含めて)を決めてあげるのは当然なのですが、子供が大きくなっても独り立ちできず、親が子供の世話を焼きすぎることが多いのではないでしょうか。 親が子供の世話を焼きすぎるか、あるいは子供が独り立ちできないから親が心配して子供の世話を焼きすぎるのか、どちらでしょうか。 私は親が子供の世話を焼きすぎるから、子供が独り立ちする機会がなくなっているのだと思うのです。 

  子供が立派な社会人になっても、なにごとも自ら進んでする気概がないのは、親が子供をそのように育ててしまったからです。 そして子供はすべての責任を親に転嫁するテクニックを身に付けてしまったのです。 親は親で子供になにか言われれば、親には育てた責任があるので子供になにも言えなくなっているのです。 責任転嫁をすることは親を恨むことにつながり、子供には責任はないことになります。 子供は失敗すれば親のせいにし、親は子供に申し訳ないので親の責任でなにごとも処理しようとするのです。 だから子供はますます成長しないのです。 子供が図に乗ってしまうのです。 いつしか、親が子供の奴隷になってしまったのです。 親の子育てに問題があったために。

  子供に自分で決断することを教えなかった結果が、現在の親子問題の根本にあるのだと思います。 いいかげんに、自分のことは自分で決断するように教育としつけをすることが必要だと思います。 人生は、いくつになっても親が決めてくれるものではないのです。 それ相応の年齢になれば、自分の責任において決断しなければならなくなるのです。 自分に責任があれば、いいかげな行動はとれなくなるのです。 親が責任をかぶるから、子供は精神的にも、情緒的にも成長できないのです。 

  未熟な年齢でも未熟なりに、自分で決断する訓練を積む必要があるのです。 その決断が間違っているときは親や教師や上司や周囲の人が、注意や指導をしてやらなければならないのです。 それが先に生まれた者の義務ではないでしょうか。 ただし、何度も言ってきているように、自分で決断するということは、自分勝手になにをしてもいいということとはちがいます。 

  どんなに周囲の人から影響されようとも、周囲の人から強制されたように見えることでも、最終的には自分が決断を下していることを忘れてはならないのです。 強盗にナイフを突きつけられているような場合は除きますが。 奴隷でも肉体は支配者のものになっても、心まで支配者のものにはできなかったのです。 現代はごく一部の国を除けば、奴隷制のような社会はありません。 

  自分の人生は、自分が決めるのです。 自分の人生は親が決めてはいけないのです。 親は注意や忠告にとどめるべきです。 親は子供が社会的に自立するまで、面倒を見てやるだけでいいのです。

   自分の人生を自分で決定できれば、たとえ失敗しても親に文句を言ったり、暴力を振るったりすることはできないはずなのです。 自分自身にかかるしかなくなるのです。 自分自身にかかるということは、ひとつには自分から逃げることもでき、また自分の非を認めて本当の自分の姿を見つめ直す機会にもなるのです。 もうひとつ、自分で自分を精神的に痛めつけることもできます。 どちらを選ぶかは、これもまた一人一人の自由です。 親に人生の決定権を握られていれば、親を恨むことはあっても自分を見つめ直すということはないでしょう。

  自分で自分の生き方を決定するということは、これほどまでに重要なことなのだと思います。 自分で決定したことについては責任逃れはできないのですから、一生懸命にがんばるしかないのです。 一生懸命に自分で努力するということは、多くのことを経験することであり、多くのことを経験することは人生を豊かにしてくれるのですから。 この件に関しては「状況(経験)が人をつくる」を読んでください。 だから経験の豊かな人は、決断力ができるのです。 決断力のあることがいっそう自分に対する自信を植え付けてくれるのです。 この逆もまた真実だと思います。 

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