自分(現実)とどう向き合えばいいのか

  いままでに「現実から逃げるな、現実を直視しなさい、現実と対決しなさい」と言ってきましたが、その覚悟ができても自分や現実にどのように向き合えばいいのかが分からない人も多いのではないでしょうか。 かく言う私も分かったつもりで、分からなかったような気がします。 現実と向き合うということは、そんなに難しいことではないと思います。 現実に立ち向かう方法が分からないから、難しく思うだけだと言えます。 だれでもが知っていることなのですが、自分が逆境に陥るとその方法が思い出せなくなるだけだと思います。

  「自分(現実)と向き合う」とは、自分になにかが欠けている(はじめからすべてが備わっている人はいない)から問題にぶつかってしまうのだと言えます。 そしてその問題に直面することによって、どんな自分になろうとしているかということなのです。 「なぜ自分だけがこんな目に遭わなければならないのだ」に書いたことですが、自分には他の人とは違うなにかが欠けている(備わっていなかったから)から問題にぶつかってしまうのです。 欠けているものがなにもない人(完全な人とでも言えますが)がいたら、どんな問題にぶつかってもそんなに悩むことはないのです。 完全な人には、なんでも解決できる能力が備わっているからです。 でも現実には、そのような人はいないのです。  だからすべての人にとって生きていくことは、「苦」なのです。 お釈迦様でも、そうだったのです。 完全な人はいないのです。

  ただ人によってぶつかる問題が違うだけなのです。 他人には悩みがないのではなくて、自分とは悩みの種類が違うだけなのです。 なぜ悩みの種類が違うのか。 それは人それぞれに生き方、考え方、そして環境が違うからなのです。 また能力に差と相違があるからなのです。 これが個性の違いかも知れません。

  たとえば、自分が言うべきことを言えないということは、自分には自己主張する勇気が欠けていたということを知ることになるのです。 断るべきときに断れなかったということは、自分に断る勇気がなかったことと、相手によく思われることによって自分の存在を確認しようとしたということなのです。 なにごとも長続きしないということは、自分には継続する力が欠けていることを知ることなのです。

  ほかのすべてのことも同じことです。 問題に直面して右往左往してしまうということは、それらに対処する能力と方法を知らなかったということを自覚することなのです。 こう考えれば経験するということを通してしか、自分を知ることができないということを理解してもらえるのではないでしょうか。 だから現実から逃げ回っているかぎりは、自分を知ることができないし、問題を解決できなくなって、ますます苦しむだけなのです。 これは何度でも、繰り返して叫ばせてもらいます。 現実から逃げているかぎり、自分を嫌っているかぎり、苦しみと悩みは続くのです。

  自分を知ってはじめて、自分がどんな人間になるかを決めることができるのです。 現実に直面することによって、自分に欠けているものを知り、よりよい自分になろうとすることもできるし、現実から逃げ回る生き方を選ぶこともできるのです。 なにをどう決めるかは、各人の自由なのです。 それことそが人間は自由だと言うことではないでしょうか。 これが人間は自己責任で自由に行動してもいいということです。 自由とはこのようなことをいうのだと思います。 なにをどう選ぶかは、各人の決断に任せられているのです。 どんな自分になるかは、自分が決めるしかないのです。 それを自分以外のひとに決めてもらうから、ただでさえ苦しい生き方がますます苦しいものになってしまうのです。 

  だれかに責任転嫁をできるような生き方は、決してしあわせをもたらしてくれないと思います。 よくも悪くも自分で納得できる生き方だけが自分をしあわせにしてくれるものと思います。

  経験こそは最大の師です。 それを避けるから自分が強くなれないのです。 現実が「教えてあげるよ」と言っているのに、それを拒否するから自分はなにも身につけることができないのです。 経験することによって、この次は同じ失敗しないようにすることが大切なのです。 一回だけの失敗で同じ失敗は二度と繰り返さないことは難しいことですが、同じ失敗を繰り返さないように努力することが現実と対決するということではないでしょうか。

  自分が引きこもってしまったのは、自分になにが足りなかったかを考えるチャンスを与えてもらっているのです。 そのことに考えが及ばないから、いつまで経っても立ち直れないのです。 経験から学ぶことは多いのです。 経験から学ぶことができるか、あるいはなにも学ぶことができないのかも、その人の心の持ち方次第なのです。

  自分のやることなすことが、他の人より上手くいっている人は、それだけ現実から逃げないで努力しているからなのです。 人より上手くいかない人は、現実から逃げていることを教えられているのです。 ただ我々の方が気がつかないでいるだけだと思います。

  繰り返しになりますが問題がおきるということは、自分に欠けているものがあるから問題がおきるのだということです。 大切なことはなにが欠けているかを自覚することです。 そしてその経験をもとにして自分はどんな人間になろうとしているかということです。

  現実は自分になにかを教えようとしているのだと考えれば、物事の考え方は大きく変わるはずです。 そしてそれ以外に、なにもないのです。 つらく、苦しいときは一時的に自分から逃げてもいいから、いつかは舞い戻って考え直せばいいのではないでしょうか。 一時的に自分から逃げることまでを否定してしまったら、本当に苦しみにつぶされてしまう危険性もあります。 そんなときは、なにも考えないでじっと時期を待つことも大切ではないでしょうか。

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