親のしつけ

  私たちが自分の性格を考える場合、親の性格やしつけ、教育方針を意外に軽視していることが多いようです。 私たちの判断基準は多くの場合、親や社会からの影響に大きく左右されています。 環境(自然や社会環境だけでなく、過程や教育なども含む)が人間に与える影響は、個人の人格形成に決定的な影響を与えます。 名前は忘れましたがドイツの人文学者は「人間は環境の子である」とまで言っています。 人間はある程度の年齢になれば自分で価値判断はできますが、それ以前はほとんどの場合親の判断に従って生きてきたと言えます。 と言うことは、自分でも知らず知らずの間に、親の価値判断の基準を子供ながらにも受け入れてきた、自分の価値判断基準の中で重要な部分を占めるようになっているはずです。

  ある程度の年齢になれば自分で価値判断ができるといっても、その底には親のしつけや教育が大きく影響しているのです。

  だからこそ、我々は「なんだか分からないけれども、そうしてしまった」などというときは、無意識に植え付けられた親の価値観を疑ってみる必要があると思います。 ひとつの家庭の中で、親も子も同じ価値観の中で生活しているわけですから、自分たちの価値観を疑うことはあまりないと言えます。 親は自分の価値観を疑いながら生活していても、子供は親を信じているので親の価値観を子供心にも疑うことはないでしょう。 そして大切なことは、人間はあたりまえと思っていることは疑おうともしないのです。 第三者から見ればとんでもないことでも、その家庭内では当然のこととして通用することもあるのです。 この当然のことと思われていることが、一般社会常識とかけ離れていれば、その人の生き方が苦しくなるのです。 「なんだか分からないけれども、おかしい」というときには、この無意識の自分を考え直すことが必要だと思います。

  親のしつけや教育が子供の発育にとって有益なものであれば、その子供は自信を深め人間関係は良好になっていくでしょう。 反対に親のそれが精神症的であったりすれば子供は心を病んだり、よけいな苦労を重ねることになるのではないでしょうか。 子供がいつかこのことに気がついて、自分の価値観を変えない限りつらい人生が続く可能性が高いと思っています。 社会のいろいろな問題を起こす子供の背後には、このような親がいることが多いように思われます。 親が自分の価値観に基づいて子供を一生懸命に育てても、親の価値観が反社会的であったりすれば子供は幸せになれないのです。 親の性格が子供に与える影響は大きいのです。

  親の価値観が子供の発育を結果として妨げていることもあるのです。 現代社会は、それが顕著に表れていると思います。 立派な子供を育てようとして厳しく育てたことが、逆に子供の自立性をつみ取っていることは枚挙にいとまがありません。 自分はどんな考え方の親に育てられたのか、問題がこじれたときにはそのようなことまで考えてみる必要があると思います。 そしてそのことに気がつけば、生きることがそんなに苦しくならないかも知れません。 私には、そんな経験があります。 

  あえて過激な言い方をすれば、親になってはいけない大人が多すぎるのです。 子供を虐待したり、自分の心のうさのはきだめにしたり、そんな親も多いのです。 このような親に育てられれば、どうなるかはいまの現実が証明しているではありませんか。

  学校の成績のよいことだけが子供のしあわせを保証すると思っている親も、同じことだと思います。

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