「自分が傷つかないでは自信を持てない」理由

 私は声を大にして「自分が強くなるためには、自分が傷つくことは避けられない」と何度も繰り返して言ってきました。 ここでは「自分が強くなるためには、なぜ傷つくこと避けられないのか」について改めて考えたいと思います。 「自分が傷つく」とは、本当の自分の姿を知ることだと思います。

 そして、もう一つ大切なことがあります。 それは、自分が自信を持つためには、結果的に相手をも傷つけることがあり得ると言うことです。 自分が、どんなに善意でしたことでも、相手を傷つけてしまうこともあるのだと言うことを忘れてはならないのです。

 その理由は大きく分けて二つあるのではないでしょうか。

 第一は、本当の自分を知らなければ抜本的な対策は立てられないということです。 原因が分からないままで対策を立ててしまうから、何回もつまづくことが多くなるのです。 本当の自分の姿、そしてなぜそうなったのかを分かることは、自信のない人にとってはつらいことなのですが、自分を強くするためには自分の下記のようなことを見つめざるを得なくなるからです。 

いつも言い訳をして、その場しのぎをしている
いつも「ノー」と言うべきときに「ノー」と言えない
いつも相手の責任をかぶっている
嫌われたくなくて、いつも八方美人になっている
分かっているのに、なにもする気になれない
言うべきときに、いつも自分の考えを言えない
自分はきままでわがままだ
いつもなにをしても中途半端で長続きしない
いつも他人のことだけを優先させてしまう
いつまでも考えてばかりいて、行動に移せない
決断できない
他人の悪口を言わずにはいられない
一度決心したことを、すぐに破ってしまう
約束を守れない
いつも責任転嫁をしてしまう

 このように書き出せばきりがなくなるくらいあげられると思います。 こんな自分の欠点を正面から見つめなくてはならなくなるから、弱い自分が傷つかざるを得ないのです。 ここであきらめてしまえば、自分が強くなることはできず、ますます自分で自分の生き方を苦しくしてしまうのです。

 自分の欠点を見つめて、そこから出発するしかないのです。 弱い自分が自分の弱さを見つめるということは、できそうでできないことなのです。 弱い人が「自分は傷つきたくない」と思うことは当然なのですが、それを乗り越えた人だけが、自信というすばらしいものを持つことができるのです。

 自信さえ持つことができれば、この世の中のすべてのことがいままでとはまったく違って見えてくるのです。 これも経験してみなければ分からないことです。 理屈では決して分からないことです。 たとえ外面的なことはなにひとつ変わっていなくても、すべてのことが変わって見えるのです。

 第二の理由は、「自分が傷つかないためにはなにもできなくなる」ということがあげられます。 この世の中は行動(発言することも含んで)すれば、同時に失敗する可能性も避けられないからです。 生きていくことは、常に失敗と隣り合わせなのです。 現実はすんなりと成功する確率よりも、むしろ失敗する確率の方がずっと高いかもしれません。 それなのに失敗を恐れてしまえば、なにもできなくなって当然なのです。

 ひとつの成功の陰には30の失敗があると言います。 そしてその30の失敗の陰にもたくさんのささいな失敗があるのです。 失敗の積み重ねが、成功につながっているのです。 失敗のない成功はないのです。 生きることも、これとまったく同じことが言えるのではないでしょうか。 それなのに失敗してはならないと思えば、なにもできなくなることは当然すぎるくらい当然なことなのです。 いまの社会が「失敗する人間はダメ人間だ」と暗黙のうちに教えてしまっているからです。

 失敗を過度に恐れてしまえば、自分の経験の中で成功したようなことしかできなくなり、自分で自分の世界を狭めてしまうことになります。 そうすれば失敗(自分が傷つく)する確率も低くなるからです。 それでも失敗の確率はなくなりはしないのですが、ともかく失敗する確率が低くなることだけは確かです。 経験だけが人間を育ててくれるからです。

 失敗を恐れることが問題なのではなくて、その恐怖で前に進むことができなくなってしまうことが問題なのです。 失敗に対する恐怖はだれにでもあるのです。 

 と言うことは、自分が進歩する機会が失われてしまうということになります。 自分が傷つかないために、自分にできる範囲のことしかやれなくなるのですから、自信の持ちようがなくなってしまうのです。 ここでも自分が傷つかないで強くなることは無理なことを分かってもらえるのではないでしょうか。

 自信を持てなければ、不安だけがつのってくるだけです。 不安は、生きることの最大の阻害要因です。 自信がないから不安になる、不安になればますます自信を失う。 この悪循環が、生きることをますますつらくしてしまうのです。 不安を解消するには行動するしかないのですが、行動すれば失敗(自分が傷つく)するかもしれなくなり、ジレンマに陥ってしまうのだと思います。 このジレンマを断ち切るには「決断」という勇気を持つしかないと思います。

 自分が強くなるためには「自分が一時的に傷つくことは避けられない」ということを、身をもって経験することがなによりも大切で必要なことなのです。 そしてこの恐怖を乗り越えなければならないのだと思います。 「強い人は挫折や絶望を知っている」と言われるのも、このようなところに理由がありそうですね。

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