性格は遺伝する

 現代科学からすれば、「なにをいまさら」と言われることでしょう。 でもちょっと、待ってください。 私の言いたいことは、科学的なことではないのですから。 では「なんだ」と言うのかを、これからお話しします。

  子供は両親の遺伝子を半分づつもらっているのだから、親子は姿形や性格が似ていても不思議はありません。 でも私の言いたいことは、親の子供に対するしつけや教育によって、子供は親の期待するような人間になっていく可能性が高いものだということです。 と言うことは、親の考え方や性格や親の無意識の意識は、遺伝子とは別の方法で子供に引き継がれるということです。 しつけという方法で。 

  現代科学でも人の性格は、すべて親の遺伝子によって決定的に決定されるものではなく、思考というトレーニングを通して性格を変わることが確認されています。 脳神経を流れる電流の流れ方が変わることによって、神経伝達物質の流れが変わり、その人の性格も変わるのだそうです。 だから親のせいだといって逃げるのはだめです。

  よく子供がなにか社会的な問題を起こしたりすると、世間では「あの親の子供だから、あんなことをしても不思議ではない」と言いますが、それはまったく理由のないことではないと思います。 すなわち親のしつけや教育の仕方に問題があったから、子供が問題を起こしてしまったのです。 この意味でも性格は遺伝するのです。 親子の毎日の生活の中で、子供は親の姿を見て育っていくのです。 親が間違ったことや好ましくないことをしていれば、子供も自然にそれを見習うようになるのです。 

  親が本当の意味で(どんな意味?)親となることは、大変なことなのです。 セックスをすれば子供はできるのですが、それだけでは動物と変わるところがないのです。 子供を一人前の人間にしてこそ、親と呼べるのだと思います。 どんな人間が一人前の人間なのかは、ここでは問題にしません。 問題が大きすぎるのです。 

  子供は、自分がどうして現在のような性格の人間になったかに心当たりがなければ、それまでの親子関係を考えてみる必要があると思うのです。 毎日当然と思ってきたことには、人間は疑問を持つことは難しいのです。 その親子の間では当然と思われて来たことも、社会の常識からすればとんでもないことだったのかも知れないからです。 私は、そのような実例を幾度となくみてきました。 親子という限られた範囲で通用することでも、社会では気違い沙汰にしかみえないことも多いのです。 でもそのような親子関係から社会を見れば、社会が狂っているとしか見えないでしょう。 私は「社会の常識に合わせなさい」というのではなく、自分たちの親子関係が正常なのかどうかを、考えたくはないですけれども、一度は考えてみることも決して無駄ではないと言いたいのです。

  このことはなにも、それまでの親子関係を否定することではないと思います。 それまでの親子関係に問題があったと分かっただけでも、意味のあることだと思います。 そして、そのあり地獄から抜け出す努力をすればいいのではないでしょうか。 このときに決して自分の親を恨んではいけないと思います。 なぜなら親もそのような性格になったのには、だれにも言えない事情があったからだと思うからです。 その両親も祖父母に影響されてきたのです。 この因果に自分が気がついただけでも、よかったと思えばいいのではないでしょうか。 色々の事件を起こした家庭の異常な親子関係が報道されますが、最大の問題はそのような異常な親子関係が、その親子の間にあっては異常なことではなく当然のこととして受け止められていることではないでしょうか。 または分かっているのだけれども、どうしようもないという人間の性(さが)に泣いているのではないでしょうか。

 ここで本筋を離れて、お釈迦様の話をします。 「天上天下唯我(てんじょうてんがゆいがとくそん)」とは、あまりにも有名な言葉ですね。 でも、その後に続く言葉をご存じですか。 「故に我一切の輪廻を経て断てり」と続くそうです。 「この世の中ではひとりひとりの人が、それぞれに尊いのだ、その尊さ故に私はすべての因果関係を断ち切った」という意味です。 一人ひとりが価値ある存在だからこそ、自分で考え、そして過去のしがらみから解き放たれたとでも解釈しましょうか。 因果応報は、どこかで断ち切らなければ、しあわせにはなれなのですね。

  そのような因果は自分の代で終わりにすれば、それはそれで高い授業料を払ったと考えるしかないと思います。 巡る悪い因果は、自分のところで終わりにしたいものです。 なにしろ親も子供も、お互いに選ぶことはできないのですから。 与えられた親子関係を出発点として生きていくほかに、生きる道はないのです。 この親子関係も否定しようとするから、親子間の争い毎や尊属殺人なども起きてしまうと考えるのです。

  自分の生き方や考え方を見直すときには、自分が親からどのように育てられたかということは非常に重要なことだと思います。 親からなにを受け継いで、なにを受け継がなかったか、とても大切なことだと思います。 とくに劣等感は受け継ぎやすいと思います。 自分が劣等感に悩んでいるなら、ぜひともこのことを考え直す必要があると思います。 いままでに想像もしなかったようなことが発見できるかも知れません。

  性格が環境によって大きく左右されるならば、自分の在り方を変えることによって性格も変えられると思います。 簡単なことではありませんが。 毎日の小さなことの積み重ねが、いつの間にか自分の性格をも変えてくれるのだと思います。

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