いい生活としあわせな生活

  よくテレビで「あなたはどんな生活をしたいですか」と質問されると、「いい生活をしたいです」という答えが返ってくることが多いように思います。 「しあわせな生活」とは言わないで、「いい生活」と言いますが、このふたつは似ているようでも内容は随分と違うと思うのです。 発言するご本人がどれほど意識しているかは分かりませんが、「いい生活」というときは、多分に物質的に恵まれている生活を指しており、しあわせな生活」とは物質的な面よりも心の豊かさを意識した言葉といえます。 もちろん「いい生活」という意味の中には、「しあわせな生活」が含まれているはずなのですが、普通は意識的に区別して用いることはまれでしょう。

  ここでの「いい生活」とは、精神的よりも物質的に豊かな生活を指すこととして考えます。 いい生活を実現するためには、まずもって先立つものが必要になります。 先立つものとはお金のことです。 お金を人よりも多く得るためには、

 必死になってがんばる
       ・ 一生懸命がんばること自体はとってもいいことだと思いますが、動機が問題なのです  
       ・ その結果体をこわすことがあるかも知れない 
経済的利益を優先的に割り当ててもらうためには、相手に取り入る必要がある
       ・ 贈収賄事件などがこれに該当します
       ・ 自分を偽っても経済性を優先させることになる
無駄を省く
       ・ 効率だけが優先されて、そのほかのことが無視されかねない
       ・ 節約とけちの区別が付かなくなり、けちになる恐れがある
儲けのためならば悪事をはたらくこともある
       ・ 人をだます
相手を傷つける
周囲から嫌われても意に介さない
       ・ 相手の気持ちを思いやれなくなる
身勝手な行動をとりがちになる
最新の情報を求めて、心の安まる暇がなくなる 

  など、色々の悪弊がでてきます。 

  なによりもいけないことは物質的に豊かになると、その欲望には限りがなくなってしまうことです。 自分自身のことを顧みれば、大きなことは言えませんが。 当初の目標が実現するとより高い目標を設定し、その実現のために努力するようになるのです。 目標を達成するために努力することには問題はないのですが、その努力に際限がなくなり、かえって脅迫的な努力に変わってしまうということです。 しあわせになるための目標であったはずのことが、自分の心を脅迫的に支配するようになってしまうのです。 分かりやすい話をすれば、お金持ちはお金に汚いと言われますが、最初の目標は自分の物質的生活を豊かにすることであったのが、いつしかお金を貯めることが目標に変わってしまい、「もっと、もっと」ということになってしまうのです。

  物質的に豊かになれば自分の財産を守るための努力をしなければならず、そのためには人間を信じられなくなったり、裏切ったりして疑心暗鬼になり起こさなくてもいいようなもめ事も起こすようになってしまいます。 「お金の奴隷」となってしまうのです。 自分をしあわせにするはずであったお金が、自分の苦しみのもとになるのです。 このような苦しみは生きている、自分の考え方を変えない限りつきまとうはずです。 精神的には常に追いつめられているように感じると思います。 お金があるが故に苦しむことになることも多いのです。 世の中を見渡せば、このようなことで苦しんでいる人、人間関係が破綻してしまった人は枚挙にいとまがないでしょう。

  しあわせな生活とは精神的にゆとりのある生活ではないでしょうか。 いくら物質的に恵まれていても、精神的な脅迫感にさらされていては何にもならないと言えます。 貧乏もつらいですが、精神的にゆとりのない生活、本当の自分を抑圧しなければならない生活はもっとつらいのではないでしょうか。 自分のしたいことができる生活、それがしあわせな生活ではないでしょうか。 いい生活をしたければ、しあわせな生活をすることに心がける必要があるでしょう。 精神的に豊かになれば物質的豊かさを守るにしても、その方法が違ってくると思います。 人を信じられるし、脅迫感も持たないだろうし、なによりも相手に信頼されるのでだまそうとする人が非常に少なくなると思うのです。

  この世の中のもっとも大きな誤解のひとつに、自分がしあわせになるには相手を蹴落とさなければならない、お金持ちになるためには相手から奪い取らなければならないと信じていることにあると思います。 「相手の不幸が自分のしあわせになる」、こんな考え方が我々の生活を支えていると思います。 残念なことです。 相手も自分も同時によくなることによってだけ、心安らかになれると思うのですが、この価値観を変えることができる日はいつ来るのでしょうか。 それまでは、苦しみの世界が続くと思います。

  精神的に安定していない人は、ますます物質的なことで自分の心の空虚さを埋めようとし、そのために人間関係が行き詰まってしまい、ますます物質的なことに自分のよりどころを求めてしまうのです。 その結果は前述したとおりです。 

  大変難しいことですが、物心両面のバランスある考え方が必要になると思います。 

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