あなたは感情のはけ口を持っているか

  現代社会はストレスの溜まりやすい仕組みになっています。 いまや健康管理上ストレスをいかに上手に処理できるかが、社会的にも大きな問題になりクローズアップされています。 ストレスがたまると精神症になりやすいことは科学的にも認められていることだし、そうはならないまでも毎日を楽しく送ることが出来なくなります。 明るく生きるためにも、ストレスを溜めないようにしなければならないのです。 自分のためだけでなく、家族や周囲の人のためにもなることですから。 ストレスの発散の仕方を知らないと、生きることはますます苦しいだけのものになっていくでしょう。

  ストレスを溜めないためには、自分の感情を押さえ込まずに上手に表現する方法を知ることです。 ここで言う「上手に表現する」とは、相手にいやがられないように(相手の感情を害しないように)自分の意見を明確に伝えるということではないでしょうか。 自分の意見を明確に伝えるということは、とりもなおさず自己主張すると言うことです。 念のために申し添えておきますと、自己主張することは自分の言いたいことを言うことではなく、言うべきことを話すということです。 「言いたいこと」という言葉の中には、多分に感情的な意味が含まれてしまうからです。 自己主張するときは、難しいことなのですが感情をできるだけ入れないようにすることが必要です。 言うべきことに感情が交じってしまうと、「言いたいことを言っている。 あいつは、身勝手なやつだ」と言う印象が残ってしまうことが多くなるからです。

  自分の心の中にあることを、素直な気持ちで伝えることのできる人は神経症になることはないと思います。 相手が納得してくれなくても、聴いてもらうだけでもいいのです。 くだけた言い方をすれば、「愚痴を聞いてくれる人」が必要なのです。 その相手は人によって違います。 いまは少子化の時代なので兄弟げんかなどで、うっぷんを発散する機会も少なくなりました。 親たちも仕事を離れるとひとりでいることや、家族だけで過ごすことが多く愚痴を言いにくい環境になっているので、なおのこと愚痴をこぼし合える人が求められるのだと思います。 愚痴を上手にこぼせることは、生活の必須の条件になったような気がします。 ただし、ペットを相手に愚痴をこぼす人はちょっと危険な状態にあると思います。 

  最近ペットを虐待するひとが増えましたが、ペットを虐待する人は心の憂さを晴らす対象を、人間ではなくなにも言えない弱い動物に求めたのです。 自分でそのようなことを意識していることは少ないと思いますが。 人間に八つ当たりする勇気がなくて、動物に八つ当たりしてしまうのです。 心が病んでしまっているのです。

  仕事上で上司に自分の意見や気持ちを率直に伝えることは大変なことですが、これができないと仕事上のストレスを家庭にまで持ち込んでしまったりして、私生活が壊れてしまいます。 上司の性格にもよりますが、自分の気持ちを率直に伝えただけでは解雇の理由になることはないはずですから、我慢して毎日苦しい生活を送るのか、出世は遅れても心の晴れ晴れとした生活を送るのかは各人が決めればいいことでしょう。 上司が立派なひとであれば、自分の意見を言える人の方が長期的には信頼されると思うのですが。

  愚痴ばかりこぼしている人は嫌われますが、ときには愚痴を言うことが精神衛生上重要なことだと思います。 ときにはおもいっきり愚痴りましょうよ。 ものごとのすべては、他者や社会との関連の中で考えなければ、自分に閉じこもることになり、その行き着く先は社会を恨むことしかなくなるのです。 自分一人だけが助かろう、自分一人だけが得をしようと考えることの結果が、社会を恨むことにつながるのだと思いますが、いかがでしょうか。 自分を孤立した存在として捕らえることからは、問題の解決はあり得ないのです。 辛く苦しいことかも知れませんが、社会との連帯の中でものごとを解決しなければならないのです。

  なにごともそうだと思いますが、ものごとは押さえ込めば押さえ込むほど爆発の威力は大きくなるのです。 小さな欲求不満は小さなうちに発散することができればあとに残らず、大きな事件に発展することもなくなるのです。 親や社会がよってたかって子供の欲求を押さえ込んでいるから、大きな問題になって爆発するのです。 親や社会にそのような意図がまったくなく、子供のためだと思ってやっていることだけに、問題の根は深いと言わざるを得ません。 

  自分の感情を発散する場がないと、不平や不満が鬱積して人間関係に表れてきます。 私たちの周りを見渡しても、いつも感情を押し殺している人はどことなく不機嫌に見えませんか。 そのような人が一度爆発すると手が付けれらななることも多いのですが、それは日頃たまっていた不平不満が心の限界を超えてしまったからです。 日本人の常識からすれば感情を表に出すことは「はしたない」と思われるでしょうが、感情をうまく表に出して心の底にためこまない知恵を身につけることは、必要不可欠のことなのです。 自分が困っているときに親友に自分の話を聞いてもらうだけでも、心が軽くなるのは感情を発散しているからです。 だから自分の心を分かってくれる人がいるということは、なによりも大切なことなのです。 ひとりで自分の殻に閉じこもってしまうから、ますます感情のはけ口がなくなっていくのです。 家庭内暴力なども感情を家の外で発散する場を失った結果だと思います。

  感情を発散することは、なにも口に出して話すことばかりでなく、ひとそれぞれの方法があります。 スポーツをすること、散歩をすること、趣味に没頭すること、ショッピングをすること、誰もいないところへいって大声を出す、なんでもいいのです。 自分なりに気分転換ができればいいのです。 そのようなことができなくなったときは、要注意かと思います。

トップページへ戻る