あなたは、本当に思いやりをかけてあげているつもりなのですか、それとも

 なぜ、あえてこのようなタイトルを掲げたかといえば、自分は本心で思いやりをかけているつもりでも、その動機が自己保身にあることが意外に多いと思うからです。

 自分を悪く思われたくない、いい人と思われたくて、相手のことを心配しているようなときのことです。 本人は本当に相手のことを心配してあげているつもりでも、心の底では相手によく思われたいので心配しているということが、私の人生体験からは多いように思わざるを得ないのです。 もちろん、本人は決してそのように考えてはいないはずですが。

 とくに、日本人にはこの傾向が強いと思います。 

 私の体験を一つ書きます。 私の友人のことです。 彼の奥さんが突然蜘蛛膜下出欠で死亡したときのことです。 彼と奥さんは、熱心なクリスチャンでした。 そして、奥さんはごく普通の人なのに、葬儀の参列者は五〇〇人を超えました。 それほど、みんなに慕われていたという証拠です。 お葬式が終わり、しばらくしてから彼はこんなことを言いました。 「みんな、残された自分のことを心配してくれるなら、そっとしておいて欲しい」と、温厚な彼が怒ったように話しました。 彼に話しかける人は、男一人が残され、みんなに慕われていた奥さんが亡くなったのですから、本当に心配していろいろと話しかけてくれたはずです。 とくに「奥さんは、本当にいい人だった」と言われることがつらかったようです。

 そう言われることで、奥さんへの想いを断ち切ろうとしているところに、否応なしに奥さんのことを思い出さずにはいられない、そのことがつらかったのだと思います。

 世の中には、本当に心配なら、そっとしてあげるという思いやりもあるのです。 このような思いやりは、日本人にはなかなか理解されないでしょうが。 私も、後者の考え方をする一人です。

 自分が相手にどう思われているかが気になるから、いろいろいと思いやりをかけてあげることは、悪いことでもないし、必要なことでもあるのですが、自分の心の奥底に潜む動機に思い至る必要があると言えますね。

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