イッキー・ウッズ

 シルベスター・スターローンが主役で、ロックアップという映画があった。スターローンが無実の罪で刑務所に入れられ、刑務所の悪たれ所長をやっつけるような内容の映画で、1989年に公開された。この映画の中で囚人達のフットボールのシーンがあり、看守になびいている囚人達とスターローンのいるチームが対戦する。

 このフットボールは防具も何も付けず、スエットの上下だけで泥んこのグランドの中で行われる。試合はほとんど喧嘩状態で骨折者が続出する中、スターローンのTDで勝負がつく。このTDの時、スターローンはエンドゾーンの中で「イッキー・シャッフル」を踊っていた。踊るといっても2ポイントスタイルで右手のボールを右膝の近くに持っていき右足を2回踏み、次に左手にボールを持ち替え同じように左足を2回踏む。さらに右足で同じことを繰り返すだけだが。

 1988年シーズン、シンシナティ・ベンガルズの新人RBイッキー・ウッズは大活躍をし、1989年1月のスーパーボウルに出場した。このスーパーボウルは、あのラスト39秒でモンタナからテイラーにTDパスが決まり、SFが劇的な逆転勝を収めたスーパーボウルだ。残念ながらこのスーパーボウルでイッキー・ウッズは活躍できなかったが、シーズン中はTDを上げるたびにイッキー・シャッフルという誰にでも出来るようなTDダンスを踊って話題になった。

 ロックアップの中では、このシーンのパロディでスターローンがイッキー・シャッフルを踊ったのだが、映画館の中はシーンとしたのもので、笑っていたのは私だけだった。アメリカ映画にはフットボールに限らず、色々なパロディが出てくる。最近のフットボール映画は全然観ていないが、良く観ていると思わず吹き出してしまうシーンがきっとあるに違いない。

 何時だったかこの話を静岡Falconsの練習で話したら、イッキー・シャッフルを知っているのは40歳前後の連中だけだった。考えて見れば我々も大学に入るまで、フットボールなんて全然知らなかった。ましてや当時NFLの中継はNHK-BSだけで、NFLの話題についていけるのはこの中継を観ているごく僅かな人達とTD誌やAFM誌を読んでNFLの情報を仕入れている人達だけだった。ウッズのことを今の連中が知らないのは無理もない。

 私は、NFLの色んなシーンを覚えている。それはつい最近のように思えることなのだが、まるで知らないという世代が周囲のほとんどを占めるようになってしまった。シーズンオフに、昔のシーンを思い出して書く度に歳を感じてしまう。25年という年月はやっぱり長い...。

2001.5.22