扉の詩 通過
安河内律子
丈高く分厚く塗り固められていた扉が開いた
扉の先には
人工の光が溢れ
試みの宙と大地が用意されている
命ある全てのものが越えなければならない無形の関門
開門を待っていた百歳の翁は
名前のない作物を育て始め
宙には若鳥の羽ばたきが聞こえる
やがて過去からの難民もやってくるだろう
身一つで走ってくる彼らがくぐり抜けるまで
扉よ、しばし、閉ざすのを待て
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