季刊午前23号

扉の詩  通過

              安河内律子

丈高く分厚く塗り固められていた扉が開いた

扉の先には

人工の光が溢れ

試みの宙と大地が用意されている

命ある全てのものが越えなければならない無形の関門

開門を待っていた百歳の翁は

名前のない作物を育て始め

宙には若鳥の羽ばたきが聞こえる

やがて過去からの難民もやってくるだろう

身一つで走ってくる彼らがくぐり抜けるまで

扉よ、しばし、閉ざすのを待て


目次

扉の詩 安河内律子

小説「赤色」 天谷千香子

小説「夢子」 香月真理子

小説「悪筆和尚ー承天寺異聞ー」 脇川郁也

詩「まん中にいる」 吉貝甚蔵

詩「木橋へ」橋本明

エッセイ「松露」樋口大成

エッセイ「風の盆恨み歌」古木信子

エッセイ「Mizuki@mail.宝塚/jp」湯川久子

マイ・フェィバリット・シアター「アラビアのロレンス」杉眞理子

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