季刊午前30号紹介

☆『季刊午前』総目次とあゆみ

1991年創刊号から現在までの掲載作品一覧とその間の例会活動、季刊午前の出来事、社会的事件を編年体で掲載しています。平成の時代の動きと季刊午前のあゆみは重なっているのです。

☆2000字特集

節目となる号数の時に行ってきた企画です。今回3回目になります。2000字という字数制限での自由原稿です。ジャンルは評論、ショートショート、エッセイ、詩に渡ります。23名の参加がありました。以下掲載順にタイトルと作者名です。

「啄木と東京」宮本一宏・「広津和郎氏の散文精神について」大江高弘・「萩原朔太郎の再読」小原廣・「いまごろ年頭所感」杉眞理子・「川眺めの不思議」宇崎史人・「小説ひとり探険隊」ごとうしんぞう・「武蔵と私と友」園田俊夫・「霧のむこうのイタリア」西田宣子・「古希同窓会」西村聡淳・「わが家の西瓜前線」橋本明・「おならの話」古木信子・「わが永井荷風」諸藤成信・「父のヒゲ」安河内律子・「のぞみの塔」山田敏彦・「川の周辺」脇川郁也・「森禮子さんへの手紙」加茂宗人・「幸美の雨」欅わたる・「月夜に跳ねる犬」天谷千香子・「彼岸参り」末次鎮衣・「行列」中川由記子・「科白」野見山潔子・「メルトモ」広橋英子・「☆から始まり」吉貝甚蔵

お気に入りの作品に出会えると思います。

☆小説二編−冒頭紹介

「満月コンサート」諸藤成信

 桜林を背景にした舞台には歌手のアイコが立った。上空に残る初秋の赤い光が周りの山の稜線をくっきり浮かび上がらせている。歌い手が真正面に見る海の光は夕刻の始まりとともに鎮まり、凪いだ水面の果てには半島の灯台が光り始めた。

「楽髪」西田宣子

 毎日、楽髪(らくがみ)神社の境内をつっ切って職場に通う。職場は「よしの」という古びた小料理屋だ。アパートから「よしの」まで歩いて十五分。楽髪神社は、ちょうど中間点にある。

この「楽髪」は「文学界」の上半期同人雑誌優秀作に選ばれ、「文学界」6月号に転載されました。作者の西田さんは「チョウチンアンコウの宿命」(1998年)でも優秀作に選ばれていらっしゃいます。

☆「見えること 見えないこと」石村定子・天谷千香子往復書簡

 石村定子様

  三月初旬、一夜を過ごしホテルのカーテンを引くと、昨夜の対岸の灯火をうつつ に見たような朝。薄暮の空から白いはなびらが揺らぎ降り、昨夜、・・・・・

 天谷千香子様

  めぐりあわせというものは、人の一生のうちの日々のあわいに時としておとずれ るものであろう。今年も桜の花が咲いた。さくらの開花がしきりに待たれるように なったのも、加齢というものであろうか。

午前30に