世界と歌と

 

「ファ・ローズ・トゥ・ロード」サプリメントの表紙に掲載した詞のごときもの。


Severnn& Selmeri 〜 剣と魔法

ひそやかな樹々の間に小径をたどる今日。

黄塵の舞う戦場も、吹き荒ぶ嵐の海も、今は彼方へと去り、

世界を満たすのは木洩れ陽と鳥のさえずり。

そして、どこからか聞こえる懐かしい歌。

 

森は暗く静まりかえっていた。

下生えに迷い、遥かな陽光に心和らげ、

暗がりに目をこらし、泉に乾きを癒す。

世界が見知らぬ森ならば、すべての人もまた旅人。

 

暗がりには秘められた力がある。

時の始まりに生まれ、終わりへと還る力が。

力の技は失われても、その度に新たな智恵は生まれ出る。

それは世を経ても微かに残る歌のように。

 

森の音に耳を傾け、その人は馬上に微笑んでいた。

けれどもあなたは、幻ではなかったのか?

たおやかな横顔は、溢れる光と一瞬の翳りは?

それは、思い出せないほど遠い唄声ではないのか……

 

時代の中を、世界の中を、ひそやかに歌は流れゆく。

失われた夢をたどり、見果てぬ夢を待ち続ける。

そして秘められた力が立ち顕われる時、

幻は現世に影を結び、旅人は地に生まれる。

 

全く作品解説になっていないが、さりとて詩ともよびかねる代物。押し詰まったスケジュールでテンションだけやけに上がっていたことだけは記憶している。


Melyune Esion 〜 月歌物語

今はもう喪われてしまったのか、月光の下に流れていたあの歌は。

きらびやかな騎士の装いと、窓辺に立つ姫君の物憂げな吐息。

星影に舞う精霊たち、石と玻璃の都。

それは、地上にあるには麗しすぎたのだろうか。

 

過去が奏でるのは、月に捧げられた歌。

豊饒なる胸に抱かれ、天空のまなざしに見守られながら、

男たちが紡いだ果てしない夢のかけら。

そして風の間に交わされた、かりそめの秘めごと。

 

男たちは夢を購おうと、石に魂を封じ込めた。

女たちの火は奪われ、竈の中に封じ込められた。

口づけは甘くなったが、傷が癒されることはなくなった。

沈黙の娘たちは奥津城深く、ひそやかに命を抱き続けた。

 

命に怯える男たちは、戦いと言葉で力を盗み出す。

奪い取った火で鉄を鍛え、鋭い刃が死を購う。

北風のごとき腕が、女たちから最後の秘密を奪い、

そして男たちの魂は永久に滅び去った。

 

時はめぐり、消え去った夢の上を風は吹きぬけてい行く。

夜の高みをめぐる娘は今もなお、横たわる母と声もなく呼び交わす。

そのまなざしは狂おしく、奪われたものを嘆き続ける。

喪われた魂のありか、月に捧げられた歌を。

 

キャンペーンシナリオのオープニングタイトル。シナリオ執筆前に書いた構想メモだった記憶があるが、全然説明になってない。


Ivanmuira 〜 ユルセルーム博物誌

思いめぐらしなさい、愛し子よ。

年古りた賢き者は、幼い命に語る。

憶えているだろうか、時のはじまりのことを。

あなたと私が、太古の微眠にたゆたう調べであった日のことを。

 

それは最初の星が結んだ光の下。

神々の奏でる樂の音、精霊たちの紡ぎ出した力の糸は、

激しくまた緩やかに天をめぐり、風と吹き、雨と降り、きらめく海ができた。

そして、虹色のあわいの中から天に昇っていく、押えきれない思い……

 

我はここにあり、またあり続けると。

この世はかくあり、またあり続けると。

たとえまた、時の間に緩やかにもつれ、

寄せて返す調べの中に還るとも……

 

小さな光が、小さな音が、想いなす命をもたらし、

命は言葉を育みながら世界に広がっていったのだ。

だから幼き子よ、その唇に讃め歌を、

命ある限り大地に奏でておくれ。

 

我はここにあり、またあり続けると。

この世はかくあり、またあり続けると。

たとえまた、時の間に緩やかにもつれ、

寄せて返す調べの中に還るとも……

 

太古の龍が若き人間族に語りかけた詞。サプリメント執筆の最終段階、徹夜明けの朝に事務所で書き上げたように記憶している。


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