セムス・ファーイーレンの戦い

『Protector Returns 西方守護の帰還』ガイドブックより抜粋改訂

 アリアゼイオンでデュラ沿海軍を殲滅した大陸派遣軍は、掃討戦のため第3方面軍をアウロンに残し、主力は船団に搭乗しファストディウムに入った。薄緑月3日にローダニゾン・ドゥーロン間の要衝アウモディウム市が陥落し、ロードン公国府は本国との連絡を遮断されていた。体制を整えた大陸派遣軍は緑月18日、デュラ内陸戦域軍を撃滅すべく出撃した。

 この地域を制圧していたのはゴルヌキーゼ元帥率いるデュラ内陸戦域軍であった。一ヶ月前にヒュールミスルの要衝アウモディウム市を攻略していたゴルヌキーゼは、ストラディウム軍がヒュールミスル西岸からアウモディウム奪還を目指すと予想した。このためサブダラフ率いる左岸集団軍を同市に集中すると共に、全軍の3分の1にあたる右岸軍を南下させて警戒にあたっていた。
 ところがストラディウム軍はヒュールミスル湾曲部の東方に渡河すると、三つの大縦隊をなして北へ進撃を開始した。アウモディウム市を東北方から大きく包囲する大迂回作戦であった。
 これを察知した時点で内陸戦域軍には三つの選択肢があった。

甲:東進して派遣軍の背後を遮断
乙:ヒュールミスル西岸に撤退し右岸集団軍と合流
丙: 北進して渡河点に迫るストラディウム軍を迎撃

 甲案は最も積極的な案だが、デュラ軍の貧弱な補給状況を考慮すれば全軍が崩壊する危険性が大きく、敵に好機をさらすだけであり問題外とされた。
 乙案は戦闘を回避し戦力を温存できる。しかしストラディウム軍が急進してヒュールミスル西岸に到達した場合、右岸軍を含む全軍が背後を遮断され、西岸に孤立することになる。
 退くにせよ進むにせよ、鍵は北部の渡河点にあった。デュラ軍はアウモディウムを放棄し北上を開始した。この左岸集団軍は下記の兵力から構成されていた。
 

デュラ内陸戦域軍の序列(推定)

沿海戦域軍
ゴルヌキーゼ元帥
左岸集団軍
総司令官 ザブダラフ将軍
第1軍
グルサディ
第2軍
ベルデ・グノー
第3軍
指揮官不詳
第4軍
ディワス・ギア
第1ガムタッド軍団6,000第3ダー軍団8,000ガムダ名誉軍団6,000第7セルゴ軍団5,000
第3ダグウェ軍団4,000第5ダー軍団7,000第4マザム軍団4,000第4東ディワイ軍団8,000
ボルグ狼騎兵軍団3,000ムルック集成軍団5,000"大皿"集成軍団5,000第7東ディワイ軍団8,000
“破壊”醜怪甲獣重騎兵軍団1,000 合計20,000 "忠誠"狼騎兵軍団2,000 合計21,000
合計14,000合計17,000
第5軍
指揮官不詳
第6軍
コルムスタヴ
予備軍
ドル・ズルア
兵力総計
グスリダン名誉軍団8,000サゴワニ軍団6,000ゴホルタ集成軍団3,000歩兵102,000
ガルッシャ軍団7,000第2ゼーブル軍団5,000グル・ジャハト狼騎兵軍団3,000騎兵16,000
ガルガダ狼騎兵軍団2,000第3ゼーブル軍団5,000ワム・ジャラク狼騎兵軍団3,000
合計17,000東方狼騎兵2,000合計9,000
合計18,000

 デュラ軍の北上はストラディウム軍軽騎兵の察知するところとなり、総司令官ディアリムイ・ベミオク元帥は全軍の西北方への転進を命じた。彼は主力部隊で敵を捕捉、打ち洩らした残兵をアステノリエ・アレル公女率いる第2方面軍で挟撃することを計画した。しかしヒュールミスル東岸に展開していたデュラ軍は、右岸集団軍の一部がアウモディウム市を経由して東岸に配転されたこともあり、彼の予想を上回る大軍となっていたのである。

 緑月29日早朝、デュラ第1軍から第4軍からなる左岸軍の主力は、セムス渡河点を目前にしてストラディウム軍主力に捕捉された。ディアリムイ・ベミオク元帥の第1方面軍と、セルベス・セルトーグ元帥が指揮を執る近衛軍である。
 デュラ軍は側面に迫る敵を察知したものの隊列の展開は遅れ、脆弱な脇腹をさらしたままストラディウム軍と戦端を開く破目に陥り敗走を重ねた。それでもデュラ軍の一部は渡河点に到達し、第1方面軍に猛烈な縦隊突撃を試みた。
 ハウレス・ニセイ元帥の騎兵予備軍が一向に現れないことは、ディアリムイの予想外の事態であった。しかしセルトーグ元帥の近衛軍がデュラ軍の側面を痛撃するに及び、ついにデュラ軍は粉砕され、残兵はヒュールミスルに追い落とされ溺死した。

 セムス会戦と同日、大陸派遣総軍の先鋒となったアステノリエ・アレル公女の第2方面軍は、北方のファーイーレン渡河点でデュラ軍前衛と接触した。第2方面軍が命じられたのは敗兵の遮断であったが、実際に遭遇したのは第5・第6の2個軍であり、さらに予備軍も後続していた。第2方面軍の2倍以上の大兵力である。
 デュラ3個軍は臆することなく突撃を開始した。公女元帥は子飼いの第11軍団と第16軍団を巧みに後退させ、時間を稼ぎながら反撃の機会をうかがった。デュラ軍先鋒はファーイーレン渡河点の直前に達したが、そこにニセイ元帥の騎兵予備軍が到着した。主力の北東方を援護する形で進軍していた騎兵予備軍は、北方に敵が存在しないため西に転進し、主力と第2方面軍の中間を前進していた。斥候から両所で戦端が切られたとの報に接したニセイ元帥は、即座に第2方面軍の救援を決したのである。この判断は最終的に正しかった。
 到着した騎兵予備軍はニセイ元帥を先頭に突撃を敢行、これに力を得た公女元帥も総反撃を命令する。勢いの衰えつつあったデュラ軍は両軍の反撃により瓦解、僅かに渡河点から西岸に逃れた兵を除き、全く壊滅したのである。

 二つの会戦に勝利した大陸派遣軍はアウモディウム市を奪還して西岸に渡った。西岸に残置されていたデュラ右岸集団軍も北方への退却を開始していたが、ナルシオン山脈方向に圧迫されて事実上消滅した。
 黄緑月16日、西方守護オスレヴェーグは諸将を従えてロードンに入城した。
 歓呼し争って西方守護の膝下にすがりつく市民や兵士を前に、オスレヴェーグは次のように言ったという。「諸君、私は帰還した。我らは父祖に導かれた兄弟であり、我らの絆が絶えることはないのだ」。


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