ユルセルームの君主


君主の称号

 統一王朝の定めた『花翼典範』には為政者の身分として以下の称号が定められている。

統一王ユルセルーム全土の王
聖王ファライゾンの王
妖精王妖精族すべての王
西方守護ストラディウム管轄地域の最高権力者
大公ストラディウム本島やエルダ、モラムスの執政者
島主ヒュノーやエーンの執政者
ローダニゾン、ドゥーロン、ナーハン、ギュノロンの執政者
首長ラムザス地方の執政者
諸都市、町、村の代表権力者

 しかしながら上記の身分がそのまま現実に用いられる訳ではない。たとえばストラディウムやモラムスの執政者に対しては「公王」「皇王」などの通称が一般に用いられる。またヒュノーやエーンが統一王朝の完全な支配下に置かれたことはない(実体の無い名誉称号としてならありうるが)。上記の呼称はあくまで、統一王朝による世界秩序を示す理念形として理解すべきだろう。


ファライゾン

聖王
 ファライゾンの元首は「聖王」である。統一王朝成立後は聖王と統一王は同一であった。つまり統一王の座に上るには、聖王であることが前提となる。
 聖王は世襲ではなく、聖都ファラノウムの玉座が選ぶという独特なものである。
 歴史に残される聖王は以下の五名である。

“頂の”エスティリオ
 初代聖王。「スィーラの最愛の子」と呼ばれたフェルダノン。聖都ファラノウム建立直後、間もなく姿を消したらしい。現在も世界を流離いながら、ユルセルーム世界の行く末を眺めていると言われる。

ラプトゥール
 第二代聖王。春の名「リュプトゥール」はラプトゥールに由来する。詳しい事績は不明。

“花開く”ファル・アレン
 第三代聖王。イーヴォ暦50年頃、大陸中央のエンダルノウムに王都を定め統一王となる。その治世は「イニアの花の時代」前期にあたる。204年に突如として崩御、一世紀にわたる混乱を生じた。

“一角龍の”イルク・セイリオン
 第四代聖王。“輝きの”オザンと龍人族の間にもうけられたフェルダノンとされ、額から一本の白い角が生えていたと言われる。西方守護ウェスト・アレルと出会い、その助力を得て301年に聖都の玉座に就き、翌年統一王朝存続の確認がなされたことにより、統一王となる。その千年にわたる治世は「イニアの花の時代」後期にあたり、統一王朝の最盛期をもたらした。
 「大戦」では無敵の槍オザノングを振るって奮戦し、ユレーグに傷を負わせる。1504年、陥落迫った王都でスィーラへの「直接嘆願権」を行使し倒れる。彼の嘆願の内容は今も明らかになってはいない。

“少年王”ガザル・ディオール
 統一王朝の歴史において、最も論議を呼ぶ人物。ガザル・ディオホルとも言う。
 シリ山脈の氷宮に住まう逃れ妖精の女王リメラレノンと、人間族の男性の間に生まれた半妖精。その誕生にはデュールの意志が関与していたと言われる。エンダルディウムに赴き“エルダの王”として認知され、聖都に入り玉座に就こうと試みた。
 玉座の前で父親に真相を明かされ、自ら目を潰して出奔したとも、大陸統一のため起こした遠征軍の陣内で暗殺されたとも言われる。彼の即位を認めるか否か、いまだ結論は出ていない。
 「シリ山脈の氷宮」「ファラノウムの王座」「水晶の王者」と続く連作、及びリプレイ「ソングシーカー」に登場。

★資格の無い者が椅子に座ろうとするとどうなるのだろうか。今のところ、座った途端黒焦げになる「電気玉座」説と、そもそも接近できない「シュバルツシルト半径玉座説」がある。

執政
 聖王の代わりに聖王国を統治するのが執政である。執政の任命方法は不明だが、聖王同様に世襲では無く、貴族の推戴ないし玉座の啓示によるものと思われる。

フィキタス
 「大戦」期の執政。統一王イルク・セイリオンの死により執政となる。デュラ軍の来襲を前に執政の座を降り、王宮の尖塔上にある「スィーラの破壊石」の封印を解き、塔から身を投げた。

★扉の無い部屋からどうやって身を投げたんだろう? 案外、尖塔が核ミサイルになってたりして……

アウロン

妖精王
 「人間族の最良の友」と呼ばれたアウル・アエンダ(海の妖精)の滅亡後は事実上ストラディウムの管理下にあるが、今も妖精王の領土として一般人の立ち入りは禁止されている。
 歴史上ただ一人の人物だけが妖精王となっている。

“緑藻の”リミン
 アウル・アエンダの長。“蒼海の”アウルの創り出したフェルダノン、スィー・リンの子だが「アウルとザリの直系であるフェルダノン」という記述もある。
 ストラディウムと深く結び、デュラの侵攻に抵抗した。無敵の槍シンサレアを有しながら、その力を用いず一族と共に海中に没した。しかしストラディウムの英雄“静の公”グンドは誕生以前の記憶の中で、リミンからメッセージを託されている。

★リミンの出自については、資料により記述が異なる。シンサレアを用いなかったことといい、謎の残る人物である。


ストラディウム

西方守護(公王)
 ストラディウム大公は連合王国の元首「西方守護(公王)」を兼ねるのが通例である。
 建国時代に溯る五つの公家のみが統一王から就位の権威を授けられている。これは初期のストラディウムが5つの部族の連合体であったことを推測させる。
 西方守護は五名家会議により選出されるが、多くの場合は公王が嫡子を後継者に指名し、数代にわたり世襲王朝が形成されると推測される。
 後継者は成年であることが前提であり、未指名のうちに公王が没した場合、成年の公家当主が選出されると考えられる。
 これは西方守護の職権が元来、選抜近衛第三軍団司令職に基づくものであり、「統一王の筆頭の兵士」たる資質が要求されることにある。従って多分に儀礼的であっても肉体的に成熟していることが望ましく、幼少の公子や老齢すぎる公子は後継候補から除外されると見てよい。

★ビジュアル的には中世ファンタジー風の王様よりも、ローマやビザンツの皇帝がふさわしい。

五公家
 五名家およびその公家の人物としては、以下が知られている。

“夢寐鳥(むびちょう)の”マバール家
 金褐色の髪に灰青色の瞳、オリーヴ色の肌を帯びる。初代以来、民を導く預言者的な資質を備えているとみなされていた。

“盲目の”イルサド・マバール
 ストラディウムの国祖。聖王“頂の”エスティリオの命により、人間族を率いて大陸を横断。辛苦により失明しながらも、ストラディウム諸島を見出して初代大公となった。ストラディウムのモーゼ。

ウェルセード
 大旗戦争前夜の西方守護。次男のベスデオ公子に暗殺された。

“天上の波”オスレヴェーグ
 大旗戦争当時の西方守護。「剣の手の君」と呼ばれた。『忘れえぬ炎』では「トルホ」と名乗りあちこちに出没する。

ベスデオ
 ヌクセン専制時代の大公。父を暗殺して大公位に就くが、西方守護への就位は近衛軍に阻止された。のち兄に位を追われ、宰相ヌクセンと共に内乱を起こして死亡。

ミヌウェレス
 大旗戦争以後の西方守護。ベスデオの死に間接的に関与したことを悩み、毒を仰ぎ失明。しかし賢明かつ洞察力に秀でたため、オスレヴェーグから摂政に任命される。後に兄を継いで西方守護となり、ストラディウムに繁栄をもたらした。

★預言者的家系と言えば連想されるのがイスラエル。するとオスレヴェーグがダビデ、ミヌウェレスがソロモンということになるのだろうか。ちなみにオスレヴェーグはピーマンが嫌いらしい。

“想霜夏景(そうそうかけい)の”ジリデムンド家
 白金色の髪と青または緑の瞳、雪白の肌を帯びる。精霊から特別な加護を得ているとされる。
“白髪の”イヴミュリス
 ジリデムンド家の祖。愚かな兄が魔物に騙された結果、自身に降りかかった「霜の呪い」に苦しむ。イーヴォ神の啓示によってサーサを見出し、呪いを打ち破った。

“初夏の少女”サーサ
 夏(サーサ)の語源となった精霊。人懐こく、その愛らしい姿を見た者は、終生憂いかに心塞ぐことはないのだと信じられている。イヴミュリスとある運命を共にすることを選び、イヴミュリスは呪いを打ち破ることができた。

★「ある運命を共にする」とは妃になったということだろうか。だとすれば妖精ならともかく精霊を妻にできたのは、さすが統一王朝創始期だ。
 サーサの影響を引くだけに、絵に描いたような「王子様」「王女様」みたいな容姿の一族。もっともサーサの加護がまだ残ってるから、時々遠い目をして「私は見ました…」とか言い出しかねないが。

“蜜果(みつか)の”アレル家
 赤褐色の髪と青い瞳、小麦色の肌を帯びた容姿が「人間族のよき力の体現」と呼ばれるように、人間の理想的属性を備えているとされる。
ウェスト
 「イニアの花の時代」初期の西方守護。
 統一王ファル・アレンの崩御後に訪れた混乱の収拾に尽力する。強大な魔法を秘めた品々が、安易に用いられ災いをもたらすことを恐れ(一説にはファル・アレン崩御もそれに関っていたという)、「闇と炎の大旗」をはじめとする魔法の品々を南西諸島に築いた「ウェスト・アレルの螺旋の塔」に運びこみ、妖精の血を引く妃と共に姿を消した。

“彼方の礎”アステノリエ
 大旗戦争期の軍人。第11軍団司令兼首都方面軍司令官として活躍。別名「緋色の姫将」「処女元帥」。

★ウェスト大公の故事からすると、アスティも妖精の血を引いていることになる。
 長所も欠点も人間的なだけに、比較的わかりやすい一族。もっとも厳格で体面にやかましい連中のようだから、礼儀作法には注意が必要だろう。
 アスティは家族仲が悪いようだ。親父さんが「ナウシカ」のヴ王みたいだったら嫌だなあ。

“蒼窓(そうそう)の”ベレドール家
 漆黒の髪と瞳、小麦色の肌を帯びる。妖精王“緑藻の”リミンと深い関わりを有してきた。
マレストル
 大戦期の西方守護。息子グンドに公王位を譲り渡す。しかし引退した訳ではなく息子の下で軍を率いていたらしい。アウロン湾の海戦で陣没。

“黒髪の”カンナ・ミュール
 マレストルの公妃。ファラノウム貴族の出身で予言の才を持ち、グンドを生む。

“静の公”グンド
 言うまでもなくストラディウム史上最大の英雄。ストラディウム人にとってはキリストとアーサー王を足したような存在。
 生まれてから一言も喋らなかったため“静の公”(グ・ウムド、“最も静かなる者なりせば”の意)と呼ばれる。十歳になって始めて父に話しかけ、生前に妖精王“緑藻の”リミンから「人の子の誇りにこだわることは、人間のためにならない」と伝えられたと語る。大公位を要求して父に拒絶され、ひそかに城を脱け出して山小人の刀匠ヒンテサンの下に赴く。紫水晶の八重歯を抜いてヒンテサンに与え、“鞘なき剣”グンダルバウセを鍛えさせた。この時ヒンテサンは、グンドが「紫牙龍(ザラバウムイラ)」の転生ではないかと述べている。
 外から「人間族の大門」を開き、若干十四歳で父に代わり西方守護に就く。この時、魔王ユレーグは玉座から立ち、マスト大陸の黒龍騎兵軍団の動員を命じたと言われる。
 グンドは“高貴なる人間族”を率いてデュラ、ヒュノーと戦う。ヒュノーの城門前で真言を発し、人間族にただ一度許された「直接嘆願権」を行使した。ザリ神の力の宿った“鞘なき剣”によってアガルッドの宮殿は焼き払われ、アガルッドは永遠に癒せぬ醜い火傷を顔面に負う。
 その後、ストラディウムは三年にわたりデュラ軍に包囲される。黒龍騎兵の出現を聞くと西方守護軍の解散を命じ、二人の騎士ハクセオイ、ヒンドルスと共に黒龍騎兵に突撃。ユレーグの前に姿を消した。
 なおベレドールの妃については、その本名は系譜に記されず、「清けき涙の娘」「呪われし娘」などの異称のみが伝えられる。

★よく誤解されるが、グンドはフェルダノンではない。「霊的にはフェルダノンじゃないの?」と学者が言っているだけである。まあ「人間族の王たる王」とか呼ばれてるから、並の人間じゃなかったことは事実だろう。
 それにしてもいるんだなあ、グンドの直系の子孫が。ストラディウム人なら名を聞くだけで平伏しそうだし、鬼どもなら逃げ出すだろう。しかしどんな連中なんだろうか。個人的には『辺境警備』の脊高さんを連想してしまうのだが。

“木霊葛(こだまかづら)の”システィファン家
 一般的には茶褐色の髪と瞳、小麦色の肌を持つが、婚姻により容姿にはばらつきが見られる。“闇と炎の大旗”の旗竿を代々預かり、五名家会議の議長に任じてきた。前代の失政を収拾する暫定政権として就位することが多く、一代限りで他の公家に位を譲ることが多い。
ナファイメス
 統一王朝初期の貴族。システィファン家の家祖。詳しい事績は不明。

“大地実れる”エマンスィーレン
 ナファイメスの妃。植物や収穫の守護者として崇拝対象となっている。ストラディウムにおいてデメテルのような役割を担っている。

アロゴ
 大旗戦争時代のシスティファン公。いちはやくヌクセンの策謀を察知するが、ウェルセード大公暗殺の嫌疑をかけられ亡命を余儀なくされる。

“微笑みの灯火”エファ
 大旗探索者。アロゴの娘でミヌウェレスの幼馴染。道化に身をやつしてヌクセン追放に奔走するが、ヌクセンから呪いをかけられ、道化の化粧が落ちなくなる。

★気さくで庶民的な家柄。手ずからお茶を入れてくれそうだし、「あんた」とか呼んでもニコニコしてそうだ。
 それにしても仮面のお姫様が鞭を振り回すのだから、ユルセルームというのも猟奇な世界である。


エルダ

王・女王
 妖精の社会エルダについては、人間には理解し難い点が多い。
 一説にエルダの妖精たちは「ひとりひとりが自らの王」であるが故に、支配者を必要としていない。ただ人間など他種族と交渉する際に、エルダ社会を代表する者が「王」「女王」と呼ばれるのだと言う。
 “少年王”ガザル・ディオールがエルダの王位を認められたのは、このような経緯だったのであり、言わば妖精の観点を逆手に取った僭称であったという。

サティファリエル
 “少年王”ガザル・ディオールの伝承に登場する「エルダの永遠の女王」。極めて美しい古の妖精で、彼女自身は「ファーマフェリアの后」を称していたと言われる。近年の資料に現れる「名を覆われし妖精女王」とは、このサティファリエルのことかもしれない。

★エルダの内情について信じられる資料は極めて少ない。人間と接触する妖精というのは、相当に人間くさい変わり者なので、彼らの発言からエルダの一般的な妖精を理解することはできないのだ。
 階級の存在しない理想的共産主義社会というのが近いのかもしれない。


デュラ

太守
 デュラは暗黒の太守を頂点とする専制国家である。建国以来、ただ一人の支配者の下に統治されている。

ユレーグ
 デュールがその身を割いて生み出したとされるフェルダノン。しかしながらどの程度デュールの意志に従っているのかは不明である。
 「大戦」の際には自ら黒龍騎兵軍団を率いてストラディウム、エンダルノウムを陥れ、ユルセルーム大陸のほとんどを制圧した。現在は帝都グスリダンの王宮にあって姿を見せることはない。ユレーグはイルク・セイリオンとグンドによって負わされた傷が癒える時、再び立ち上がると言われている。

★ようするに「死なないスターリン」である。


ヒュノー

島主
 デュールが海底より持ち上げたとされる魔大島。悪しき女妖精によって支配されるが、その支配はデュラに比べればまとまりに欠けるようだ。

アガルッド
 そもそもは妖精王リミンの妹リュクセイン。「大戦」の際、兄を裏切ってその滅亡をもたらし、“高貴なる人間族”に恥辱を与えたことから“誇り奪いし者(アル・ガルド)”すなわちアガルッドと呼ばれるようになる。
 グンドがヒュノーの宮殿を攻略した際、“鞘なき剣”グンダルバウセによって顔面を焼かれ、終生癒えぬ醜い傷を負う。男装しているとの記述もある。

★リミンの妹だということだからスィー・リンから生まれたのだろうが、片親がよくわからない。兄貴を裏切った理由は不明だが、何か怪しい愛憎劇がありそうである。


ラムザス

首長
 騎馬遊牧民国家であるラムザスを統べる首長は、五年に一度開かれる競技会の優勝者が就任する。競技の内容に関する資料は今のところ見られないが、単なる馬術でなく高度な判断力と意志力が試されるものであろう。

スヴェンボールト
 伝説上のラムザス人の始祖。草原の民を脅かした「黒き民」を打ち滅ぼしたと言われる英雄。ラムザス市にその事績を称える碑文が残されている。

レンダス・グハール
 四王国期の首長。ガザル・ディオールが大陸統一のため起こした遠征軍を、ラムザス草原で阻もうとしたと言われる。

★ラムザスは独立心旺盛な遊牧部族の連合体で、首長だからといって絶対的な権力を持っている訳ではない。そういう連中から勝ち抜いて首長を勤めるのだから、相当に駆け引きに長けた政治家だろう。
 個人的には首長を汗(カン)と意訳したいところである。グハール汗とか格好いいじゃない?


モラムス

皇王
 モラムスの首長は皇王と称する。しかし『花翼典範』に規定された称号は大公であり、西方守護が「公王」と呼ばれるのと同様の通称と推測される。皇王は建国の太母ガルパネレアの長子ヴァング=ノス=サ=レより連綿と続く血統が世襲するが系譜の詳細は不明。

“赤髭の”シクロス
 「大戦」期の皇王。グンドと共にデュラ軍と戦い、包囲に屈することなくモラムスを守り抜いた。愛用の戦斧ディクサガイムと共にモラムスの最深部に埋葬された。

★皇王ぐらい絵的に想像のつく君主はいない。髭ジジイに決まってる。


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