〔山種美術館賞展〕95.5.4


 選び抜かれた作家ばかり。力作ぞろいである。30〜50代の比較的若い作家ばかり。力強い線、美しい色。それぞれに主張がはっきりした作品ばかりである。

 この作品展は、2年に一度。美術評論家や美術館の学芸員からなる選考委員が、前年に活躍した若手の作家から30人を選んで作品を委嘱し、各自の力を競わせるもの。力作ぞろいのわけである。

 大賞受賞作品「ゆふまどひ」。美しい静かな空気の流れてくる絵である。人物も背景も淡く描かれ、少し、物憂い雰囲気が漂う。青いソファーに座った若い女性の白い服にのみスポットライトがあたり、その美しい顔や手には薄暗いもやがかかる。女性の心の陰りを見事に表現している。

 優秀賞受賞作品の一つ「古墳のある風景」は、迫力のある作品である。中央にどっしりとした重みを感じさせる古墳(=山)を据え、その前に、古墳の間にひっそりとたたずむ民家を配する。整然と区画され耕された畑をふくめ、悠久の歴史と人々の営みの強さ─したたかさ─を感じさせる絵である。

 もう一つの優秀賞作品「太古の森の」。若葉香る季節の森。一枚一枚の若葉がていねいに描かれ、美しい。画面の茂みの中から、ひょいっと動物が顔を出しそうな雰囲気であり、見る者を森林の奥深くに誘い込むような絵である。深山の森の一画をそのままもってきてしまったようで、余韻を感じさせる絵である。

 この作品展の作品を見ていると、日本画がもはや伝統的なそれではないことがよくわかる。作者の主張がはっきりと描かれており、具象画・象徴画・抽象画あり、ほとんど洋画の世界と同じである。


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