〔ブリュッケ展〕   1992.4.29


 1905年にドイツで結成され、1913年まで続いた若い画家たちのグループ「ブリュッケ」の作品展。

 最初に展示されてあったのは、ヘッケルの自画像。これは、ゴッホの自画像そのものである。色の使い方から、筆のタッチに至るまで、ゴッホそのもの。「ブリュッケ」の画家たちが、ゴッホの影響を受けて絵画の世界に入ったと言われているだけのことはある。

 これは、他の画家たちも同様。一様に、1905年ごろの作品では、ゴッホの影響大で、描く人は違っても、どの絵もおなじように見えた。それが、各個人の個性を際立たせてくるのが、グループが分裂した1913年ごろからだとおもう。

 最も印象に残っているのは、油絵ではなくて、版画である。一つは、ヘッケルの「踊る女」、そしてキルヒナーの「自画像」。さらに、ロットルフの風景画(題は忘れた)。どれも、荒々しい太い線で表現されている。「踊る女」は、大胆な線で、動きの持つ激しさを見事に表現している。「自画像」も、くっきりした線で、画家の強い意志をすっきり現していたようにおもう。

 びっくりしたのは、ロットルフの風景画。ある港を描いているのだが、見た瞬間は、日本の浮世絵、とりわけ、北斎あたりの風景画かと見間違えたくらいだ。全体として平面的であり、黒い縁取りが、画面の中の全ての事物を覆っている。建物から、それが外国のものであり、漁師の家などが、かなり変形されているので、浮世絵でないことはわかるが、極めて似ている。これはなぜだろうか。

 「ブリュッケ」の画家たちの作品の中に漲る活力のようなものは、長くて1930年代の初頭どまりのような気がする。以後は俗物化し、作品そのものも、陳腐なものに堕しているようだ。これは、まさに、時代そのものである。


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