〔10人の銅板画家展〕   1992.4.29


 神奈川県立近代美術館が所蔵する銅板画による、作品展。「ブリュッケ展」を見たついでにいったのだが、かえって、この展覧会の方の印象が強かった。

 作品は全て、戦後のもの。日本の銅板画を世界的水準に高めた大家たちの作品と、その人たちの弟子たちの作品で構成され、戦後の版画の流れが概観できる。

 最も印象にのこったのは、斉藤寿一氏の作品で、「青い光」と題する作品。抽象的な絵で、それが何を現すのかはよくわからない。しかし、印象的なのは、画面の中の物体の周囲を取り巻く青い光。色としては、純粋な青。しかもきわめて明るく澄んだ青。ラピスラズリの青である。この青い光に包まれて、様々な形の物体が、暗い宇宙を漂っているよう。妙に青い光だけが、目に残る作品であり、美しい作品であった。

 この斉藤氏の作品は、どれも青色がとても美しい。「風」シリーズでも、「宙」シリーズでも、中心は、深く極めて透きとおった青色。青色は、神秘的な色である。良くわからないが、引きつけられる作品であった。


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