〔第三回さっぽろ国際現代版画ビエンナーレ展〕96.3.24


 76カ国、1256作家の3033点の応募作品の中から選ばれた146点の入賞・入選作品の展示。世界各地の異なった地域の作家たちの作品が展示されていて、とてもおもしろい。

 作品を見て、総じて言える事は、ヨーロッパ・アメリカ・日本の作家たちの作品の多くは「滅びの予感」のする、暗いイメージの作品で占められているのに反し、アジア・アフリカ・ラテンアメリカの作家たちの作品には、生きていることの生のエネルギーが満ち溢れた力強い作品が多いことである。

 今回は大賞作品がなく、準大賞が二点ある。その二点ともがいわゆる先進国ではない国に属した作家のものであることも興味深い。準大賞作品は中国とタンザニアの作家の作品である。

 ハシム・アビディ・ハシムの作品「マイ・ライフ」。画面一杯に豊かな力強い手や足が躍っている。大地に足をしっかりと踏ん張り、自分自身の手による労働によって生きていることへの自信に溢れた作品である。

 シュウ・ゾンミンの作品「TIDAL WAVE」は、大きな画面一杯に黒い人影が群れている。その姿は様々で、踊り狂っているかのようでもある。

 会場のパネルには、絵は作家の属する国を代表するものではなく、作家個人を表すものであるとの但し書きがあった。しかし、そうではあっても、その作家個人が属する国の現在の状態を表すのは当然だと思う。

 「滅びの予感」におしつぶされた先進諸国の画家の作品と、生きることの喜びに満ちた発展途上国の画家の作品。この違いは、個人の感じ方の差を越えた、それぞれの地域の文明の生命の盛衰をも象徴しているものであると思う。


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