〔レンブラント・彼と師と弟子たち展〕 1992.6.7


 レンブラントと彼の師・弟子たちの作品を系統的に集めた企画展。レンブラントの作品を師や弟子たちの作品と比較することによって、レンブラントの特色を際立たせることができる。

 レンブラントの画法。大胆な明暗のつけかたと、細密描写。これは、彼の独創ではない。彼の師であるピーター・ラストマンの作品がすでにその傾向をもっており、師と同時代の作家たちにも、その傾向が見られる。

 背景を暗い色調で描き、主題を明るい色調で描くことにより、主題となる事物に、スポットライトを浴びせたような効果をもたせる技法。これは、レンブラントに先行する画家たちの編み出した技法である。また、事物を詳しく精密に書くことも、先人達の編み出した技法である。

 では、レンブラントの独創性とは何か。

 それは、光の扱いをさらに大胆にし、主題をくっきりと際立たせる光線を使ったこと。そして明暗の差の描写を、主題と背景だけでなく、主題となる事物の細部にいたるまで、徹底して明暗の差を描写していることであろうか。たとえば、人物の肌の色など、肌の色の、光の当たり具合による微妙な差を精密に描いている。そしてそのことによって、人物の存在感が増すように描かれているのである。

 ここに、レンブラントの絵画の独創性があると思う。そして、このような技法を使うことができたわけは、事物を徹底的に写生し、現実を精密に描写していく、卓越したデッサン力にあったのであろう。

 レンブラントの素描を見ると、線の太さや濃淡によって、すでに事物が立体的に、存在感豊かに描かれている。すばらしいデッサン力に感嘆した。

また、晩年の荒いタッチで描く技法は、後世のターナーや印象派にも繋がるものか。


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