〔版画芸術の饗宴1963〜1992〕 1992.6.15


 アメリカの「刷り師」であるケネス・タイラーと、彼と共に、版画技法の新しい境地を開きつつ、作品をつくっていった画家たちの作品を、一堂に集めて展示したもの。現代のアメリカにおける、版画芸術の粋を集めた展覧会で、その技法の歩みが見てとれる。

 多種多様な作品が展示されていた。本当にこれが版画なのかと思えるような作品も多い。例えば、木の板に印刷して、それを組み合わせて作ったもの。まるで、彫刻のような立体作品となっている。また、版画といえば、平面に刷るものだが、曲面に印刷されていて、絵に立体感を与えているものなど、数多く展示されていた。また、写真をもとに印刷する技法が多く使われており、「版画」というイメージを超えるものが多い。

 しかし、作品として見ると、あまりに抽象化されたものが多く、色の塊というか、色彩の織りなすイメージ群とでもいうべきもので、強烈な色彩のインパクトはあるが、ただそれだけという感じがした。色彩があまりに強烈すぎて、美しくはあるが、なにか心が落ち着かず、むしろイライラするような傾向がある。その作品には、心がないようにも思えたのである。

 一つだけ、心の和む作品があった。題は「レイン」というもの。シルクスクリーンの技法だと思うが、水面に落ちた雨の粒により、いくつもの水紋ができ、そこに春雨のような雨がしとしとと降るというイメージの作品。雨そのものを描いた珍しい作品であると共に、自然の造形の美しさを写したものだけに、作品に優しさが感じられた。やはり、テクニックだけが先行している芸術というものとは違った、人間の心が感じられる。


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