〔長安の秘宝展〕1992.9.6


 シルクロードの東の基点。中国の都長安付近からの出土物を中心にして、国際都市長安の芸術を、隋・唐時代に焦点を当てて、展示したもの。

 特に興味を引かれたものが、3つあった。

 一つは、唐時代の皇女である長楽公主の墓から出土した「人面鎮墓獣」である。

 「鎮墓獣」とは、墓を守り、邪気をしりぞけ、死者の霊を保護するものであり、その姿を刻んだ彫刻を墓に、副葬することで、墓を守るものという。この長楽公主の墓の鎮墓獣の特徴は、白色の肌と、女性を思わせる優美な顔を持っていることである。「人面」の鎮墓獣の場合は、死者の顔をかたどるのが通例だそうなので、これは、墓の主である長楽公主の生前の姿なのであろう。美しく穏やかで気品溢れる表情である。昔に見た、ツタンカーメンの黄金のマスク以上の感動を覚えた。

 二つ目は、北魏時代の、石像「三尊菩薩像」である。

 6世紀の銘が彫られているが、同じ時代の、奈良の飛鳥大仏や、法隆寺の釈迦三尊像と違って、とても優しく、優美な姿であり、その微笑みが、人間的で優しいことに興味を持った。これは、仏教の質の違いを表しているのであろうか。

 三つ目は、唐時代の「騎馬俑」である。

 その表現されている馬の、今まさに飛び出さんばかりの姿。馬の筋肉の動きが、極めて写実的に表現されている。それに加えて、騎乗している人物の生き生きとしていること。前の時代である隋代の騎馬俑とは、全く異なっているのである。

 そういえば、先の鎮墓獣といい、唐の時代のものは、とても写実的であることに関心した。


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