〔ロシアのこころ─イコン展〕 1992.11.11


 イコンとは、ギリシャ正教会では、礼拝に用いられる「聖像」のことをいう。

 教会の内部の「聖像」の全体像が復元展示されることによって、キリスト教会が、どのような装置によって、人々の心を組織しているのかがわかり、その点では、とても興味深いものであった。

 だが、絵画作品として見ると、あまり見るべきものはなかった。

 会場に展示されたイコンの大部分は、絵画として見ると、あまりに人物の表情の描き方が類型化しすぎていて、おもしろくない。ただ、その色彩のどぎつさだけが、印象に残っている。

 もっともこれは、見る方が、キリスト教会の教えや、聖人たちの事跡についてほとんど知識がないゆえでもあろう。それゆえ、これをただの絵として見てしまうから、つまらないのであろう。

 絵として見ると、13世紀にビザンチンで描かれた聖母像やキリスト像の方が、後のロシアのそれよりも、人物の描き方がおごそかで、かえって神々しい感じがしたのが、意外であった。


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