〔大北斎展〕1993.1.2


 葛飾北斎の作品約500点を一堂のもとに展示した、迫力ある展覧会。肉筆画、版画、版本、刷り物など、北斎の作品の大部分が見られるようになっている作品展。

 とくに面白かったのは、シリーズものの名所巡り。

 完成された版画の横に、北斎のデッサンや黒い描線だけのものが展示されており、一つ一つの版画が、どのような構想のもとに作られているかが分かり、興味深いものであった。

 もう一つおもしろかったのは、北斎が、ヨーロッパの銅版画を模して作った版画作品。ちょっと見た時には、なぜここに銅版画があるのだろうといぶかる程の出来映え。よく見ると日本の風景だし、木版画なのである。

 線や色の使い方がとても精密で、しかも遠近法がとても効果的に使ってある。北斎の風景画は、ヨーロッパの遠近法が効果的に使ってあることで有名であるが、銅版画を模写したり、その作風を精密に真似ていくことで、北斎が腕を磨いていたことが、良く分かったのである。

 また、ここで始めて、富嶽36景のかなりの部分の作品を一度に見ることができた。とても変化に富んだ面白い作品で、全ての作品を見たいとの欲求にかられたしだいである。


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