〔浮世絵名品展〕 1993.2.7


 初期の浮世絵から、後期のものまで、全体の移り変わりを通観できるように構成されている。所どころにテレビが置いてあって、各時代の浮世絵の技法についての解説のビデオが流されているのは、とても良い。

 しかし、それ以外は、以前見た、神奈川県立博物館の浮世絵展の方が、作品の数も多く、様々な傾向を見られて良かったと思う。

 今回の展示で印象的なのは三つ。

 一つは、喜多川歌麿の作品。

 それまでの美人画と違って、役者絵などに多用されていた「大首絵」(人物の胸から上だけを描いたもの)の技法を使って、美人画を革新したことが良く分かった。全身の立居振る舞いで描くのではなく、顔の細部までを丁寧に描き、なおかつ表情を大胆に活写した点に、その魅力はあるのだろうか。

 二つ目は、役者絵で有名な東州斎写楽にも、美人画にかなり素晴らしい絵があること。

 三つめは、葛飾北斎の歌川広重の風景画は、それまでの浮世絵とは異質のもので、抽象化された芸術性の高いものであることが、他と比較してみると、一目瞭然であった。


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