〔仮託された形態へ─安井賞展〕1993.3.28


 具象絵画の新人登龍門となっている安井賞の第36回展。

 こういう形での現代絵画を見たのは始めてであり、強烈な印象をもった。全体的な印象を言うと、まず、これが絵画かという感じの作品が、とても多いことである。

 佳作賞の「ENOSHIMA」。

 一見した感じは、ほとんどモノクロの写真である。近づいて見て、始めて絵とわかる作品。カタログの解説を読むと、モノクロで風景写真を撮り、それを下敷きに、絵筆で再現したものという。「絵画って何んだ?」という疑問のわいてくる作品である。

 もう一つ同様な作品をあげると、「反射率39%の重複視」という作品。ガラスの全面を覆われた建物の、何重にもかさなったガラスのドア、窓に映った、重複した風景。これもほとんど写真といって良いものである。

 これ以外では、キャンバスは箱や綱や手袋やという物を張りつけた作品のなんと多いものか。絵画というよりも、立体作品に近い。作品の作り方という点で、絵画?と思われる作品以外では、テーマが「具象画」というには、あまりにもイメージの掛け離れた絵画が多いのも、この展覧会の特徴である。

 ほとんどが作者の心象風景。具体的な物や風景・人物の形はとってはいても、実在のものではなく、様々な想念を表現する形にすぎないもの。こういった傾向の作品ばかりで、この賞の入選作品は占められている。

 そしてもう一つ、テーマ全体の共通点として「滅びの予感」とでもいうものがある。まさに、時代を反映していると思う。


美術批評topへ HPTOPへ