〔珠玉の英国絵画展〕   1993.4.10


 イギリスのマンチェスター市立美術館の所蔵する18世紀末〜19世紀のイギリス絵画の名品を展示したもの。

 風景画が、かなり多いことに、イギリス的な特徴が見られる。

 解説によると、産業革命の進行によって、都市近郊への急激な人口の集中がおこり、その結果として、伝統的なイギリスの田園風景は、ほとんど見られなくなって行った。このような社会状況を反映して、イギリスの風景画の発展はあったという。すなわち、美しき過去への郷愁としての風景画である。

 出品された作品の中で、最も気に入ったのは、ベンジャミン=ウイリアムズ=リーダーの作品である。光輝く水面と、微妙な変化を見せる雲と、まるでプリズムを通したような色彩を見せる光。あのターナーを髣髴とさせる作品である。(ターナーより約半世紀遅い19世紀の末の作品)

 今回の展覧会のメインは、19世紀後半にイギリスで活躍した「ラファエル前派」とよばれる一派の作品。

 しかし、どうも好きになれない。絵があまりに様式化されており、題材や色彩が、神秘主義的臭いに満ちているからだ。色使いも毒々しいし、雰囲気的に好きでない。

 この時期のイギリス社会の、頽廃的な傾向をそのまま表現した絵画であろうか。同じ時期のフランスの絵画が、印象派を産み出し、もっと生き生きとした美しいものであったこととは、対照的であった。


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