〔浮世絵の女たち〜美人画の系譜〜〕1993.5.4


 横浜そごうに出来た浮世絵専門の常設美術館である「平木美術館」の展示。初期から後期までの代表的な画家とその作品を展示してある。

 これを見ていると、喜多川歌麿の作品が、その頂点をなしていることがよくわかる。

 構図といい色彩といい、その描かれた女性の表情やしぐさといい、とても美しくかつのびやかで、動きのある作品である。しかも、美人画という類型的な型の中にありながらも、充分にモデルの女性の個性が描かれているところにも、画家の非凡な才能と、自由でのびやかな元禄期の時代風潮を反映している。

 しかし歌麿以後の浮世絵の爛熟期とでもいえる時期は、頽廃的とでもいおうか、色彩は毒々しく、女性の表情も類型的となり、厚化粧のどぎついものになっている。しかもあまりに類型化された構図。

 こういう浮世絵を批判して、葛飾北斎や歌川広重が出て来たのだろうか。ここには展示されていないが、北斎の美人画、とくにその肉筆画は、とてものびやかで美しいものである。

 なお、同時に展示された明治以後の美人画は、これは洋風化されてはいるが、写実傾向が強くなり、江戸期のものとは、全く違った風情のものとなっていることもおもしろい。明治期の大変革は、芸術の分野などでは、伝統との大きな断絶を生んでいることの証左であろう。


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