〔大正日本画の若き俊英たち〕1993.9


 1914年に今村紫紅を中心につくられ、既成の日本画に新しい息吹を吹き込んだ「赤曜会」の若い画家たちの作品展。

 興味深かったのは、何人かの画家たちによる風景のスケッチである。

 淡彩で塗られていて、しかも遠近感があって構成がしっかりしている。ちょっと見た時は水彩画のようにも見える作品。この会の画家たちが、西洋画の研究に基づいて、日本画に新風を吹き込んだと言われるわけがわかったような気がした。

 あとは、あまり印象に残っていない。

 なぜかというと、この当時においては新しい画風として一世を風靡したのだろうが、現代ではごく一般的な日本画のスタイルなのであるから。しごく見慣れてもおり、逆に飽きてもきている画風の作品だからである。

 例えば、今村紫紅の「牛飼男・水汲女」という1915年の作品。

 インドにいってきた印象にもとづいて描いた作品だそうだが、その色彩といい、人物の描き方といい、現代の画家でいうと杉山寧の作品によく似ている。そういう意味で、現代日本画の先駆けであったということが、良く分かるのではあるが。


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