〔モネ展〕 1994.2.12


 ブリジストン美術館で開かれた、初期から晩期までの作品、約80点を集めた展覧会。描かれた年代順に展示してあるので、モネ自身の画風がどのように変化したかを、確かめることができる。

 初期の頃のモネの画風は、細密画のようなとても細かく描きあげるものであった。風景でも人物でも花などの植物でも。とにかく事物の細部までキャンバス上に再現し、微妙な色の違いまでも浮き立たせようと、努力している様がよくわかる。

 河岸のポプラ並木を一定の角度・地点から眺め、季節や時間を替えて描いた作品があった。

 季節が変わると葉の色もかわり、光の色すらかわってくる。そして時刻が違っても、光の色は変わってくる。のちに、モネが光の微妙な違いをキャンバスの上に再現しようと、様々な技法を開拓していった、その原点ともいうべき作品であろうか。

 そしてこの作品を描いたあたりから、後の点描技法が現れてくる。最初はさざなみによって、光を様々に反射する川面の描写にそれが現れる。そして徐々に事物全体におよび、この技法を試した、いくつかの習作とでもいうべき作品が見られた。

 刻々と変わる光の色彩を追い求めた作品として、ノートルダム聖堂の塔を描いた一連の作品。ポプラ並木で追い求めたその姿勢の究極の姿が、そこには見られる。ここでは、既に、聖堂は形としてではなく、様々な光の集合体として描かれており、絵を間近で見たのでは、何が描かれているのか、ほとんど判らないまでに、点描技法は完成されている。数メートル離れて、ようやく聖堂の姿がおぼろげに浮き出してくる。

 ここに、事物の姿を、見たままに描こうとしたモネの行き着いた末が、事物を光の集合体として捉えるものであった事が、はっきりと見て取れるのである。


美術批評topへ HPTOPへ