〔国宝法隆寺展〕 1994.5.5
法隆寺昭和資財帳調査完成記念として開かれた、通常は一般公開されない仏像などが、一同に展示された。
「伝橘夫人念持仏厨子」を始めて見た。
厨子の天蓋は、まさしく現在の法隆寺金堂の本尊にかかる天蓋と同じデザインであり、厨子の台座部分のデザインもまた、金堂の薬師如来像・釈迦三尊像・阿彌陀如来像の台座と造りもデザインも同じであった。
つまり、これらの物は、全て同じ時に作られたといって間違いない。
それにしても、この念持仏が、阿彌陀三尊であったとは。この時代から阿彌陀信仰が栄えていたということであり、もしかしたら、この念持仏は、金堂の阿彌陀三尊の雛形なのかもしれないのである。
これらの物を相互に比較できたのは、とてもよかった。
それにしても、現在の法隆寺とその諸仏が九州太宰府の観世音寺を完全に移動したものであることが隠され、全てが大和中心に発展したかのような観念が、このような展示会を通じても流布され続けていることは、なんと恐ろしいことであろうか。