〔東京国立博物館常設展示〕  1994.8.25


 本館の絵画の部を見た。特に印象に残った作品群が二つあった。

 その一つは、明治初期の洋画家、高橋由一(1828 〜1894) の東北地方の風景画である。
 すべて、鉛筆でスケッチしたあとで水彩絵具で彩色したものである。すべて街道筋の風景を描いたものであり、特に洋風の橋やトンネルが主題となっている。そしてそこを行き交う人々の服装が、いまだに江戸時代そのまま。江戸と洋風化された明治の様相が混在している様が、見事に描かれている。

 この日本洋画のパイオニアの一人である画家が、同じ方法で東海道五十三次や富嶽三十六景などを描いたら、どのような絵をかいただろうか。興味はつきない。

 もう一つは、江戸の画家、葛飾北斎の花鳥画である。
 ものすごく精密な絵である。飛んでいる蜂の羽や身体の模様までが細かく描かれている。これは観察に基づいているのであろうが、洋画の影響であろうか。それとも宋画の影響であろうか。

 とにかく北斎の絵が、細かな観察に基づいた絵であることは確かなようである。


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