〔近代日本の美術〕 1994.9.4
東京国立近代美術館の所蔵作品による、近代日本の美術のながれを通観しようとする企画展示である。
1) 明治から昭和初期までの洋画
まさにヨーロッパ美術の流れそのものである。ヨーロッパの動きがそのまま日本に持ち込まれている。
そことは多少無縁の所で、独自の絵画の世界を開いた画家は、岸田劉生と坂本繁二郎、そして安井曾太郎の3人だけ。岸田と坂本は対象の変形のしかたが独特であり、色彩も特徴的。安井の絵はとても日本的。立体感があまりなく、日本画の風情を漂わせている。
2) 20〜30年代の前衛美術
これも同じ時期のヨーロッパの美術運動に直結した傾向である。
3) 明治〜昭和の日本画など
この流れを見ると、1920年代の土田麦僊の国画会のあたりから、日本画がかわってきたようにおもう。絵が明るいし、面塗りの技法を多用している。現代の日本画そのものといえようか。先の安井曾太郎の絵は、この傾向の影響を受けているようだ。
4) 30年代のシュールレアリズム
ここもヨーロッパの傾向そのもの。例えば古賀春江の作品。これはルネ・マグリットそのものといえよう。また福沢一郎や靉光の作品は、同時期のダリの作品そのもの。
松本俊介もこの流れに属している。しかし1940年代の子供をテーマとした絵は、この流れからの脱出を図っているかのようだ。
5) 戦後(1945 〜60年代)
抽象画の流れに行く。日本画にも同じ傾向が見られる点が興味深い。
6) 現代美術(1970 〜)
シュールレアリズムの傾向には内在されていた思想性・哲学のかけらもない。生の形での情念のほとばしりそのものといえる。あまり深く人を感動させるものではない。