〔紅樹会日本画展〕95.1.14


 花を題材に絵にしている人が3人いた。それぞれの作品について感想を記す。

 月館さんの花の作品。
 花の作品は初めてだ。3点の作品のうち、最も印象に残ったのは「海」と題する作品。遠い彼方の水平線を眺めてたたずむ女一人。長い髪を風にそよがせた後ろ姿。ムンクの絵に、これと同じ雰囲気のものがあったように思える。水平線のかなり上にキラキラと輝く太陽が上り、海も空もその強烈な光によって様々な色彩をおびてくる。その太陽を花で表現したところが面白い。おそらくダリヤであろうか。半透明の黄色の大きな花。そしてその美しい花びらが風に舞っている。さんさんと降り注ぐ光を花びらにしたかのようだ。この風景を取り巻いた、まるで額縁のような色彩の渦。青・オレンジ・緑等の色が前面の海からわきだすうねりのように絵全体を包んでいるが、それも太陽の光によって輝いている。手前の海と渦は混沌を現し、彼方の光輝く花は希望を現すのだろうか。ともかく美しい絵である。花を描いても、そのままではなく、形象化し、何かを象徴させている。これが月館さんの絵のようだ。

 古川亨子「冬の花」。伝統的な日本画の描き方。題材はやつで。背景を灰色とし、葉を黒のグラデーションとすることで花が浮き出し、まるでボタン雪のよう。

 三村伸江「秋海棠」。バックを銀仕立てにしてあるので、薄いピンクと白の花が小さな妖精のよう。黄色いめしべをもっと細部まで描くと、さらに妖精の雰囲気がすると思う。三村さんと少し話した。野の花を描くことが多いという。花には宇宙があるとのこと。全く同感である。


美術批評topへ HPTOPへ