●2021年8月末の感染状況をどう見るか●


▼急拡大した第五波−死者の数は少ないデルタ株

 8月29日現在の感染者総数(確認された総数)は145万9314人。第五波が始まった当時の6月22日の感染者総数は78万7856人。なんと二か月余りで感染者数は67万1458人も増えて、倍に近い数になっています。
 そして人口総数に占める感染者総数は、6月段階では人口総数1億2557万人の0.6%だったのが、8月段階の人口総数1億2350万人の1.18%にまで急増しています。
 今現在の急激な感染拡大は、インド発のデルタ株が蔓延したせいです。
 だがこの二か月間で増えた死者数は少ない。
 6月22日時点での死者総数は1万4505人、そして8月29日時点での死者総数は1万5958人ですから、この間に増えた死者数は1453人にすぎません。
 二か月間の新たに確認された感染者総数のわずか0.21%に過ぎなかったのです。
 つまりこの新たな変異ウィルスは、急速に感染者を増やしましたが、ウィルス自体が持っている致命率(死に至る割合)は、かえって従来株より減っているのです。
 この新変異株は従来の株よりも人体の細胞に入りやすく、感染率は約3倍、かつ細胞に入ってから発出するウィルス量がかなり多く数百倍ということが確認されています。要するに感染した人を死亡させる確率は低くなったが、より多くの人に感染してより多くのウィルスを作り出す能力があるということなのです。
 従来より感染しやすいので、今まで以上の気を付けるしかありません。
 

▼急速におさまる兆候も!

 しかし三倍の感染力を持っているということは、従来株よりも致命率が三分の一になるということ。従来株の致命率は0.66%ですから、この新しい変異株の致命率は0.22%となります。
 この数字に注意してください。
 先に見たこの二か月間で死んだ人の数が、二か月間で新たに感染が確認された人に占める割合、0.21%に極めて近似していることです。
 つまり言い換えれば、デルタ株による新規感染者はほぼ捕捉できているのではないだろうかということ。
 従来からPCR検査の絶対数が少ないことから、ちまたでは毎日発表される新規感染者数の数倍から数十倍の感染者が放置されているのではないかとの不安を煽る報道もされていますが、逆に今回はかなり感染者を補足できているということは、やがて次第に感染者数も減少し、第五波も終息するのではないかと、少し先が明るく見えてくるのです。
 ただし新規感染者の減少傾向が緩い理由は、せっかく補足しても隔離するための療養施設や軽症・中等症者を入院させる病床の不足により自宅療養となり、その結果家庭内感染を引き起こして感染者を増やすことになっているからだろう。隔離すれば感染は防げるのにと思います。
 

▼デルタ株についての興味深い情報@ー日本人に多い細胞性免疫を逃避する

 このデルタ株について興味深い情報がありました。
 一つは、今まで日本人があまり新型コロナに罹らなかったのは、「HLA-A24」という、日本人に多く見られる型の細胞性免疫がこのウィルスのスパイクたんぱく質をよく認識し反応していたのだが、インド型などの新しい新型コロナ変異ウィルスは、日本人に多いHLA-A24による細胞免疫から逃避することが明らかになったという研究の存在です。
 つまりインド型の流行によって日本でも爆発的流行が起きているのは、この変異ウィルスが感染力を何倍にも増やしたということだけではなく、これまで日本人の感染を防いでいた「HLA-A24」という、日本人に多く見られる型の細胞性免疫から逃れられる性質を持っているから ということです。
 これは手ごわい。
 徹底的に人との接触を減らすしか手はないし、同時にワクチン接種をどんどん若い人にも広げるしか手がないわけです。
 以下のサイトに概要が示されています。プレリリースですが。
https://www.amed.go.jp/news/release_20210616.html

▼デルタ株についての興味深い情報A−デルタ株の特性を良く知って対処しよう!
 
 もう一つは、 諏訪中央病院が公開した、新型コロナウイルス感染をのりこえるための説明書です。
  http://www.suwachuo.jp/info/2020/04/post-117.php

 この中の8月10日公開は、デルタ株編。
 新型コロナウィルス感染を乗り越えるための説明書(デルタ株編)ー敵は進化した、では我々は?
https://www.suwachuo.com/pdf/deruta.pdf?_ga=2.245635716.1411706958.1629244059-1973189428.1629244059

 イラスト付きでとても分かりやすくこの新たなウィルスの解説がなされ、対処法が詳しく述べられています。

▼第五波のピークは過ぎた!

 毎日の感染者数を見ていると、東京近辺では8月22日あたりが感染者数のピークで、名古屋圏や大阪圏はそれから一週間遅れた29日付近がピークだと思います。
 8月29日の東京の感染者数は3081人とすごい数ですが、9月に入るとともにしだいに減少していくものと思われますが、従来の波と波との間の時期の感染者数、一日500人台に戻るのはずっと後だと思います。

  どうか皆さま。くれぐれも感染に気を付けてお過ごしください。


(2021年8月31日)
 


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